安藤忠雄さん手掛けたパリの現代美術館オープン 現在と過去「円」で結ぶ

安藤忠雄さんが改装を手掛けた現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」(三井美奈撮影)
安藤忠雄さんが改装を手掛けた現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」(三井美奈撮影)

パリ中心部に新たな現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」が5月22日、オープンした。建築家の安藤忠雄氏が、穀物市場だった歴史的建築物を改修し、フランスの実業家、フランソワ・ピノー氏のコレクションを収めるアートの殿堂によみがえらせた。パリの新名所として、注目を集めている。

館内に入ると、いきなり吹き抜けの円形ホールが広がり、息をのんだ。直径は29メートル。ガラスのドーム屋根から自然光が降り注ぎ、まるで古代神殿に迷いこんだよう。劇場や商店が集中する繁華街にありながら、喧騒(けんそう)とは切り離された異次元に誘い込まれる。

ブルス・ドゥ・コメルスはフランス語で「商品取引所」の意味。建物は16世紀の王妃、カトリーヌ・ド・メディシスが命じた邸宅工事が起源で、18世紀に円形に改築され、穀物市場として使われた。安藤氏は、19世紀のフレスコ天井画の下にコンクリートの円筒を配し、過去と現在が融合する空間に仕上げた。

ピノー氏は、グッチやサンローランを擁するブランド・グループ「ケリング」の創業者。現代美術の収集家として知られ、同館では保有する約1万点を順次公開する。

開幕展では、スイス生まれの現代美術家、ウルス・フィッシャー氏のオブジェ「2011、無題」を中央ホールに据えた。ルネサンス彫刻を蠟(ろう)で模した作品で、会期中に溶けて形が変わる仕掛けだ。このほか、レバノン生まれのタレク・アトゥイ氏、アフリカ系米国人のデビッド・ハモンズ氏のオブジェなどが公開されている。

同館は地上4階建て。円形ホールを囲むように展示室が配され、どこを歩いても、壁や柱が描く円弧が視界に飛び込んでくる。仏紙ルモンドは「渦巻く建築の中で作品が息づき、見る者をダンスに誘い込むよう」と評価した。安藤氏は開館前に公開した動画で、「入ってきた人が、『ここはどこか。未来、過去に向かっているのか、いや現在なのか』と同時に考えるような場所にしたかった」と述べた。最上階のカフェレストランからは、ゴシック建築の傑作、サントゥスタシュ教会が一望できる。

改築工事は3年がかりで昨年、終了。新型コロナウイルスの流行で、開館が1年遅れた。フランスは5月19日、感染規制の緩和で美術館が約7カ月ぶりに再開したばかりで、同館のオープニングは「芸術の都パリ」の復活を象徴するイベントとなった。(パリ 三井美奈)