【TOKYOまち・ひと物語】オンラインで子供の健康守る 「キッズ・パブリック」代表、橋本直也さん - 産経ニュース

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TOKYOまち・ひと物語

オンラインで子供の健康守る 「キッズ・パブリック」代表、橋本直也さん

「孤立を防ぎ、子供たちの健康を守りたい」と話すキッズ・パブリック代表で小児科医の橋本直也さん=18日、千代田区
「孤立を防ぎ、子供たちの健康を守りたい」と話すキッズ・パブリック代表で小児科医の橋本直也さん=18日、千代田区

「乳児湿疹を繰り返している」「離乳食を食べない」-。育児中は病院に行くべきか迷う病気やけがも多く、日常生活でも疑問や不安が尽きない。このような時、通信アプリなどで医師や助産師に相談できるのが「産婦人科オンライン」と「小児科オンライン」だ。これらのサービスを立ち上げた「Kids Public(キッズ・パブリック)」(千代田区)代表で小児科医の橋本直也さん(36)は「いつでも相談できる環境を整え、子供たちの健康を守りたい」と話している。

橋本さんが小児科医を目指したのは日大医学部5年生の時。病院での実習で、病気を抱えながらも力いっぱい泣いたり笑ったりする子供たちと触れあい、「生まれたばかりの命を未来につなげたい」と思った。

元々子供好きだったこともあり、迷いはなかった。医師免許取得後は初期研修期間を経て、小児医療の経験を積むため、国立成育医療研究センターで研修を受けた。そこで、衝撃を受けた出来事があった。

ある夜、救急外来に3歳の女の子が運ばれてきた。右足の骨が折れて大きくはれ、異様なほどに泣いていた。付き添いの母親は「私がやりました」と打ち明けた。母親の話から、育児に行き詰まり、追い詰められていたことが分かった。

「健康格差、なぜ」

「虐待されてしまう子も、すくすくと育つ子もいる。なぜ健康格差が生じ、どうしたら埋めることができるのか」

女の子との出会いをきっかけに、橋本さんはこのような思いを抱くようになった。平成26年には東京大大学院に入学。貧困やストレスなど、患者が病院受診に至るまでの背景について研究を始め、健康や子育て相談にオンラインを活用することを思いついた。ウェブメディアを起業した友人を手伝う中で「若い世代にとって、スマートフォンは身近で手軽なコミュニケーションツール。孤立している親とつながることができるかもしれない」と考えた。

こうして27年、キッズ・パブリックを設立。小児科オンラインの運用から始め、30年には産婦人科オンラインも加わった。

10代の避妊相談にも

会員登録後、平日午後6~10時の間で予約を取り、通話などで相談する方法と、相談内容を入力すると24時間以内に返信がある「いつでも相談」がある。

計約170人の小児科医と産婦人科医、助産師が所属。診断は行わないが、主に0~15歳の子供の病気やけがをはじめ、妊娠・出産・育児に関する幅広い相談、10代からの避妊に関する悩みなどにも対応する。

これまでに50以上の自治体や企業がサービスを導入しており、これらに所属する人は無料で利用できる。

コロナ禍で、利用はさらに広がっている。経済産業省からの委託を受け、昨年5~8月に全国民を対象に無料でサービスを提供。今年4月20日から9月までは、板橋区と世田谷区で新生児訪問を受けた保護者が無料で利用できる実証実験も行っている。

「医師や助産師にオンラインで相談することが当たり前、という世の中にしたい」と橋本さん。いじめや不登校などに悩む思春期の子供たちにも普及させたいという。

生まれてから大人になるまでの成長過程で、誰一人孤立しない社会を作るため-。橋本さんは子供やその親たちを支え続けるつもりだ。(小林佳恵)