【松岡恭子の一筆両断 デザインで人と人をつなぐ】新しいつながりをつくる試み~台湾パイナップルフェア~(1/2ページ) - 産経ニュース

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松岡恭子の一筆両断 デザインで人と人をつなぐ

新しいつながりをつくる試み~台湾パイナップルフェア~

今年3月初めの新聞記事が発案を促した「One Kyushu ミュージアム台湾パイナップルフェア」は、九州の食のプロフェッショナルに協力を依頼することから始まりました。主たる輸出先だった中国が輸入を停止したため行き場を失っている台湾パイナップルを、九州で応援することができないかと思ったのです。しかし、生のパイナップルを食べるだけでは限界があると思い、加工して消費を増やす相談をプロの方たちに持ちかけたのでした。

芯まで楽しめる台湾パイナップルの爽(さわ)やかな甘味、南国の果物特有の心弾む香り。主要な産地である台湾の高雄には、戦前の日本統治時代に遡(さかのぼ)って産業史を展示するパイナップル博物館があります。歴史漂う建物は当時工場だった煉瓦(れんが)造で、缶詰加工し輸出した産業の成長過程が展示してあるそうで、次回の訪台では必ず行ってみようと思っています。

さて、この取り組みに参加してくれた九州各地のシェフ、パティシエ、ソムリエ、バーテンダーたちは、それぞれの専門を生かし、スイーツ、カクテル、パンケーキ、お弁当、ジャムなど多彩な商品を開発してくれました。テークアウトやお店での飲食に加え、お取り寄せも好評です。また、ご家庭でも試せるようにと公開されたレシピもあります。このレシピを中国語に翻訳し、台湾でも広めて日本流のパイナップル料理に挑戦してもらおうと企画中です。

意外だったのはこういう取り組みに協力くださるプロが「この業界では実は横のつながりが薄い。パイナップルをきっかけにして他の専門家と情報交換できたのがうれしく、大変触発された」と口をそろえたことでした。折しも緊急事態宣言下で協力者自身のお店も時短や休業に迫られているわけですが、こうしたつながりがヒントや刺激になって原動力になってくれたらと、総合プロデューサーとして願わずにはいられません。

さらに社会実験One Kyushu ミュージアムでは今年オンラインサロンを開始し、飲食の新しいスタイルを試みています。設定したテーマに沿った商品をあらかじめ参加者に送付、当日はオンラインでつながって召し上がっていただく企画です。

5月に「新緑の風」と題して行った2回目では、福岡・八女の新茶と台湾パイナップルのお菓子を組み合わせました。講師は、福岡の茶司、徳淵卓氏とパティシエの佐野隆氏、司会は私が務めました。参加者は自宅に居ながらにして、お茶の淹(い)れ方を習い、味わい、説明を聞きつつスイーツを楽しみ、さらに参加者同士チャットで意見を交換できる、あっという間の楽しい1時間。講師は福岡の街に深く根ざした「場所性」を持ち、コンセプトあるお仕事に「人柄」がくっきり浮かび上がっている方々である一方、オンラインなので参加者は全国から、というスタイルに新しい食ビジネスの可能性を感じました。参加者アンケートでは、コロナ禍の影響で「適当にものを買わなくなった」「つくり手とのつながりや想(おも)いを重視するようになった」というコメントが多く現れたのも興味深く感じました。