さっと汚せばクラシックな風合いに クレパス画のコツ

こんな道具を使いました
こんな道具を使いました

在宅時間が増えた今、「クレパス画」に初挑戦することになった。「第31回 全日本アートサロン絵画大賞展」(産経新聞社など主催、サクラクレパスなど共催)への出展を目指している。これまでサクラクレパス(大阪市中央区)で、クレパスの歴史や技法を学んだ。そしていよいよ次のステージに。画用紙に向かって本格的に描いてみよう、というわけで、今回からは大阪・梅田にある大人の絵画教室「サクラアートサロン」に入門した。

油絵のような表現も可能

クレパス画の第一人者で、アートサロンの講師を務める田伏勉先生の、5日間のトライアルレッスンを受けることになった。田伏先生によるとクレパスの魅力は「油絵に近い色彩とマチエール(絵肌感触)を得られること」という。

色を重ねたり、削ったり、揮発油でぼかしたり。油絵でできることはほとんどクレパスでもできる。しかも、油絵では色を重ねるために、下の絵の具が乾くまで2日は待たなければならないが、クレパスはすぐに重ね塗りができる。

「短気な人にはうってつけの画材だね」と笑う。

トライアルレッスンではクラシック技法(グレージング)と印象派技法(点描)、現代表現(トリミング)、創作(自由表現)の4項目を学ぶ。まずはクラシックからスタートだ。

「いまから約千年前にヨーロッパで主流だった技法を用いた絵画です。伝統的なものだから、その通りまねてください」

輪郭はトレースで

1枚の風景写真を渡される。手前に川が流れ、緑豊かな堤、ヨーロッパ風の建物。これを描くという。写真をコピーし、紙の裏を木炭で黒く塗る。その下に画用紙を敷いて、コピー紙の風景の輪郭をボールペンでなぞると、下の画用紙にトレースできた。ここで先生に質問。「デッサンしなくていいんですか?」

講師の田伏勉さん(左)からクレパス技法を学ぶ田所龍一記者=大阪市北区(須谷友郁撮影)
講師の田伏勉さん(左)からクレパス技法を学ぶ田所龍一記者=大阪市北区(須谷友郁撮影)

「スケッチやデッサンはとても大事。絵画の基本ですから。でも、ここに来られる生徒さんたちには、そんな時間はもったいない。それにトレースすることは恥ずかしいことじゃない。レオナルド・ダビンチもよく使った方法なんですよ」

先生によれば、今の美大生はこのトレースさえしないという。画像をプロジェクターなどを使って、キャンバスに投影して輪郭を描く。「それが認められる時代なんです」という先生の表情はどこか寂しそうだ。

輪郭を描き終えたらクレパスを使って色を塗る。まずは下地となる色から。木や草は「黄」、空と川には「白」、そして家の屋根や壁には「薄いグレー」を大ざっぱにゴシゴシと。

「細かく塗る必要なし。間違えても平気。また、上から塗ればいい。それがクレパスのいいところ。どんどん間違ってください」

下色が塗れたら草や木に色をつけていく。

「おっと、いきなり緑色を持ってはダメ。黄色に何を重ねれば緑に? そう青ですね。まず青で基礎となる緑を作り、その上からいろんな色の緑のクレパスで濃淡を出していくんです」

空にも「青」。川の水は深さや水面に映った建物や堤の影があるため、ほかに「紫」をサーッと引くように塗っていく。それができたら揮発油をはけの先に少し湿らせ、上からサーッと掃く。クレパスがほどよく溶けてぼかしたようになじんだ。

スクラッチ技法の応用も

ここからはいろんな技法を駆使していく。クレパスの角をつかって細い線を描いたり、ペインティングナイフの先をつまんで絵の具を削り取ったり。

前回、サクラクレパス本社で学んだ「スクラッチ技法」の応用だ。木の幹には「こげ茶」、道には「うすい茶」、そして光の明暗をくっきりさせたいところには「白」を当てていく。

だんだんと絵画らしくなってきた。すると先生がお皿に「茶」のクレパスを削り、揮発油で溶き始めた。

「では、ここからクラシック絵画の最大の特徴であるグラッシュ(グレージング)をやります」

写真のコピーをトレースして、クレパス画の輪郭を描く=大阪市北区(須谷友郁撮影)
写真のコピーをトレースして、クレパス画の輪郭を描く=大阪市北区(須谷友郁撮影)

といって、その溶いたうす茶色の絵の具をはけで画用紙全面にサーッ、サーッと塗ったのである。せっかくのきれいな色の上に薄い茶色が…。なんで汚すの?

「茶色を塗り込むのは色に統一感を持たせるため。空にも水にも木にも家の壁にも同じ色が入っていると、見たときに目の中で統一感がある。それに絵画の保存も目的のひとつ。松やにのようなものです。そして当時のヨーロッパの貴族たちの古めかしい屋敷の壁には、薄茶色に汚れた感じの出た絵画が、家の雰囲気に合ったということです」

そう言われると、筆者の描いた絵にもどこか趣が…。まずはクラシック絵画の出来上がり!(田所龍一)

完成したクレパス画
完成したクレパス画