水素発電でも基礎となる高効率なガスタービン開発が重要になる。昨年、高砂工場(兵庫県高砂市)に、次世代ガスタービン・コンバインド・サイクル発電の実証設備を完成し、稼働させた。発電効率は64%台で世界最高水準を誇る。
谷村氏は「水素でもGEには負けられない」とライバル心を隠さない。三菱パワーの人員や予算はGEやシーメンスよりも1桁少ないが、売り上げは互角だ。その強さの源泉は高砂工場にある。
約92万平方メートルにも及ぶ工場内には研究開発、設計、製造、実証の施設があり、約1000人が働いている。世界でガスタービンの開発・設計、製造、実証を三位一体で行えるのは高砂工場だけだ。谷村氏は「すぐに実証発電設備で検証できる。三位一体の検証で高い信頼性を確立しているのが強み」と強調する。
試験設備などをそろえるには多額の投資が必要な上、使いこなすまでにはかなりの時間を要する。計測ノウハウも必要で高砂工場には30~40年の経験を持つベテランも少なくないという。「中国や韓国メーカーが参入できない理由がここにある」(同)。
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現在、三菱パワーが力を入れているのが水素ガスタービンの開発だ。既存の火力発電所を大規模に改修するのでは多額のコストがかかり、水素発電への転換が進まない。このため「燃焼器だけを交換する形にしている」(同)といい、現在は3つのタイプの燃焼器の開発を進めている。
マグナム発電所に導入を目指しているのは「拡散燃焼方式」と呼ばれるタイプだ。水素と空気を別々に燃焼器内に噴射するこの方式は、窒素酸化物(NOx)の発生が増え、それを抑える対策が必要となるが、既に100%水素だけで燃焼させる試験に成功している。