主要国が温室効果ガスのカーボンニュートラル(排出実質ゼロ)を打ち出し、世界が脱炭素に向け大きく動き出した。目標達成には電源の脱炭素技術が鍵を握る。国内主要企業が進める技術開発の最新動向を追った。
開発から実証まで高砂工場で一貫 「中韓メーカーが参入できない理由がここにある」
国土の4分の1が海抜ゼロメートルのオランダは、温暖化によって極地の氷が溶ければ国土の一部が消失しかねない。脱炭素への関心は高く、温室効果ガス排出削減に向けて、新たなプロジェクトが動き出している。
最北部フローニンゲン州にあるエームスハーヴェン地区は、エムス川の河口付近に位置する港で、数多くの風力発電の風車が立ち並ぶ。この地区にオランダの電力会社ヌオンが運営するマグナム発電所がある。天然ガスを燃料とする火力発電所で、発電設備が3系列あり、そのうちの1系列を2027年に100%水素で運用する計画を進めている。
重要な役割を担うのが大型ガスタービンを手がける三菱重工業の子会社、三菱パワー(横浜市)の技術だ。
火力発電は石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やし、蒸気やガスでタービンを回転させて発電するが、その過程では大量の二酸化炭素(CO2)を発生する。
そこで注目されているのが、燃やしてもCO2を排出しない水素を燃料とするガスタービンだ。三菱重工は1990年代から国の水素利用の研究に参画し、開発を進めてきた。2015年頃に欧州の電力会社からの問い合わせが増え、本格的に実用化に乗り出した。
開発の先頭に立つのが三菱重工エネジードメイン新エナジー部で技監・主幹技師を務める谷村聡氏だ。入社以来38年間、大型ガスタービンの燃焼器の開発に携わるエキスパートだ。
ガスタービンで問われるのは高い発電効率と耐久性。三菱重工は1960年代に米ウエチングハウスからガスタービンの製造方法を学び、約60年にわたって、ノウハウを蓄積してきた。今では米ゼネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンスとともに世界3強の一角を占める。