話の肖像画

演出家・宮本亞門㉑ 「日本人の感性」を信じて

舞台「金閣寺」の公開稽古で。出演者の柳楽優弥㊥らと=平成26年4月、東京・赤坂
舞台「金閣寺」の公開稽古で。出演者の柳楽優弥㊥らと=平成26年4月、東京・赤坂

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《米ブロードウェーで東洋人として初めて演出した『太平洋序曲』の後、世界中からオファーが来た。ヨーロッパではドイツ語によるモーツァルトのオペラ『魔笛』の演出も》


向こうは「本場」ですから、僕がさんざん解釈を述べても、まぁ「お前なんかに言われたくない」って、なるでしょう(苦笑)。だから僕は「原点」しかしゃべらない。つまり、『魔笛』を作曲したとき、モーツァルトはピアノの鍵盤に触れながら、どんなことを思ったのか? というように焦点を当てる。「喜び」「感動」…根源的に同じ精神を持っているかどうか。演出家の僕が何を軸にして作品に向かっていくのかを「明確」にすることです。そうすれば彼らも「なるほど」と納得してくれます。

(韓国人の指揮者・ピアニスト)チョン・ミョンフンさんがリハーサルをしているところを見たことがあります。パーカッションを指示するときに彼はこういった。「トタンに水滴が落ちる寂しい様子を想像してみて」「あなたは失恋したときにどう感じる?」と実にシンプルなんですよ。そうしたら、見事なほどに音が変わりました。

国や社会があって、じゃないのです。まず、人として何を感じるか? 何を聞き、生きているのか? 五感に触れて指示すると分かりやすい。それが愛したり、親への思いだったり…根源的なことで感じ合うことが世界で仕事をするとき大事なんだと思います。


《日本人が「はっきり主張しない」と思われていることも気になっている》


たとえ向こうが「本場」であったとしても、まったく違う発想やアイデアも求められている。怖がらずに「こうしたらもっといいかも」という提案をすれば喜ばれますよ。特に「日本人の感性」は世界の人たちから求められているのに、「日本人はどうして発信しないのか?」とよく言われます。日本人は謙虚で、そこがいいところでもあるのだけれど、「顔が見えない」「はっきり言ってくれない」…。一方で中国人はしっかり発信していますよ、って。もっと日本人は自信をもっていい。