露、反体制派とメディア統制加速 9月の下院選にらみ

ロシアのプーチン大統領(タス=共同)
ロシアのプーチン大統領(タス=共同)

【モスクワ=小野田雄一】ロシアのプーチン政権が、反体制派と政権に批判的な独立系メディアへの締め付けを加速させている。プーチン大統領は4日、テロ組織と同義の「過激派」に指定された団体の関係者の選挙出馬を禁じる法案に署名。政権の施策で収入源を断たれ、活動休止に追い込まれる独立系メディアも出ている。9月に5年に1度の下院選を控え、支持率が低下している政権側は、なりふり構わず政治環境を有利にする思惑だ。

プーチン氏が署名した過激派団体関係者の選挙出馬を一定期間禁止する法案は、露反体制派指導者、ナワリヌイ氏=収監中=の周辺者らを想定しているとみられる。首都モスクワの裁判所は現在、検察当局の請求に基づいてナワリヌイ氏の支援団体を過激派に指定すべきか審理しており、近日中の指定は確実だ。

ナワリヌイ氏は従来、自身の団体を通じて非与党系候補を支援。2019年のモスクワ市議会選や一部の地方議会選で非与党系勢力を躍進させた。しかし、団体の過激派指定と、過激派団体関係者を選挙から排除する法律の成立により、こうした活動は事実上不可能になるとみられている。

露国内では「政権は過激派の指定を政治利用している」「今回の法律は『法の不遡及(ふそきゅう)』の原則に反する」との批判も出ているが、政権側は黙殺している。

露政権は独立系メディアへの圧力も強めている。4月には良質な調査報道で知られる露電子新聞「メドゥーザ」を敵国のスパイと同義語の「外国の代理人」に指定した。指定されると、財務状況や活動内容が当局の厳しい監視下に置かれるため、不利益を恐れたスポンサーの多くが広告を引き揚げた。同紙は読者に寄付を募っているが、存続が危ぶまれている。

さらに、5月に外国の代理人に指定された露電子メディア「Vタイムズ」は6月3日、指定に伴う広告収入の減少により、12日で活動を休止すると発表した。

反体制派や独立系メディアへの一連の圧力強化は、9月の下院選を前に支持率が低下している政権の焦りの反映だとみられる。露独立系機関「レバダ・センター」の世論調査によると、プーチン氏の支持率は現在、過去最低水準で推移。与党「統一ロシア」に投票を予定する有権者の割合も、17年12月の37%から今年2月には27%に低下した。背景には、経済低迷や強権的統治の強まりへの不満がある。

実際、プーチン氏は2日、統一ロシア指導部との会談で、「統一ロシアは新型コロナウイルスとの戦いでよく働いた。しかし国民には党への不満が多くある」と述べ、支持率低下への危惧を隠さなかった。