御朱印巡り

禰豆子に似ている? 鬼女ならぬ貴女まつる信州の寺

松巌寺の本堂と「貴女」紅葉のパネル。「鬼滅の刃」の禰豆子に似ているといわれる=長野市鬼無里(原田成樹撮影)
松巌寺の本堂と「貴女」紅葉のパネル。「鬼滅の刃」の禰豆子に似ているといわれる=長野市鬼無里(原田成樹撮影)

長野・鬼無里 松巌寺

信州・戸隠山を舞台に、謡曲や書物に登場する鬼女、紅葉(もみじ)。鬼がいない里と書く鬼無里(きなさ)村(現長野市鬼無里)では「貴女(きじょ)」と呼ばれ親しみや敬意をもって愛され続ける。紅葉が持っていた守護仏の地蔵尊が松巌寺(しょうがんじ)にまつられている。

紅葉は、室町時代の観世信光作「紅葉狩(もみじがり)」で平維茂(これもち)に退治される鬼女が基とみられ、明治時代の「北向山霊験記・戸隠山鬼女紅葉退治之伝」では詳細な描写がある。

退治之伝では、清和源氏の祖とされる源経基の側室となり子も宿した紅葉が、正室を呪い殺そうとしていると疑いをかけられ京から戸隠の山中に流される。村民を欺いて食べ物などを得ているうち、手下を従えて盗賊行為も始め、ついに安和2(969)年、冷泉天皇の命により派兵された平維茂が討ち取る。

退治之伝など一般に悪とされる紅葉だが、鬼無里では評価が異なる。誤解から流刑され、水無瀬(みなせ、鬼無里の旧名)に落ち着いた紅葉は、祈禱(きとう)で村民の病気を治したり、京の文化を教えたりしていた。しかし、子が生まれ経基に会いたい思いが募り、京へ向かう準備のため戸隠山中に陣を構えたと伝承される。清水泰憲住職(50)は「当地では悲しい恋物語として伝わっているのです」と知的で優しいヒロインに思いをはせる。