横田滋さん死去1年 拉致「停滞」に政府苦悩 - 産経ニュース

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横田滋さん死去1年 拉致「停滞」に政府苦悩

オンラインで語る横田早紀江さん(奥)の言葉を聞く、めぐみさんの中学時代の同級生ら=5日午後、新潟市の市立寄居中学校
オンラインで語る横田早紀江さん(奥)の言葉を聞く、めぐみさんの中学時代の同級生ら=5日午後、新潟市の市立寄居中学校

北朝鮮による拉致被害者家族会初代代表で、横田めぐみさん(56)=拉致当時(13)=の父、滋さんが死去して5日で1年が経過した。政府は菅義偉(すが・よしひで)首相と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記による直接会談の糸口を探るが、水面下を含めた交渉は停滞し苦悩を深めている。高齢化する被害者家族に再会までの時間的猶予は限られており、政府の取り組みは正念場を迎えている。

「元気な間に、めぐみさんに会っていただきたいと思っていた」

5日、めぐみさんが拉致された新潟市で行われた追悼会にリモート出席した加藤勝信官房長官兼拉致問題担当相は「じくじたる思い。本当に申し訳ない」と滋さんを悼んだ。

加藤氏は「拉致問題は菅内閣においても最重要課題。すべての被害者の一日も早い帰国実現へ全力で行動していく」とも述べ、条件を付けず、首相と金氏の直接会談を実現するよう北朝鮮に働きかける政府の意向を重ねて強調した。

直接会談は、滋さんが死去する約1年前の令和元年5月、安倍晋三前首相が初めて意欲を表明した。しかし同じ年の2月、拉致解決の重要性に理解を示していたトランプ前米大統領と金氏がベトナムで行った会談が決裂する中で、北朝鮮は日本側の呼び掛けに明確な反応を示さないまま、安倍氏は昨年9月に辞任。トランプ氏も同年11月の大統領選で敗れた。

それでも首相は安倍氏の路線を引き継ぎ、国連や主要7カ国(G7)の電話会議などで繰り返し直接対話を追求する意向を示してきた。政府関係者は「状況を打開できる可能性はある」と強調する。経済的苦境や新型コロナウイルス禍に追い詰められた北朝鮮が日本の支援に活路を見いだす可能性もあるからだ。

ただ、北朝鮮は平成14年の日朝首脳会談でめぐみさんらを「死亡」「未入境」とした主張を変えていない。政府関係者は「当時、最高指導者だった金正日(ジョンイル)氏の決裁。絶対的決定の『訂正』は後継者の正恩氏だけができる。拉致解決には日朝首脳会談が不可欠だ」と話す。

バイデン政権は核放棄に向けた段階的合意の積み上げを図るとみられる。政府は米国と連携しつつ、拉致解決や核放棄に対する事実上の「見返り」として、日朝国交正常化に伴う経済支援を協議する戦略を描く。

日朝対話が現実味を帯びれば、被害者安否に関する北朝鮮側の説明を検証する情報はより重要性を増す。北朝鮮は日本の国内情勢も注視しており世論への働きかけも必要だ。政府関係者は「拉致をめぐる北朝鮮の回答は未知数。日朝交渉が実現すれば回答受け入れの判断を含め日本全体の決意が試されることになる」と語る。(中村昌史)