【話の肖像画】演出家・宮本亞門⑳ タイで交通事故…九死に一生を得て(1/2ページ) - 産経ニュース

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演出家・宮本亞門⑳ タイで交通事故…九死に一生を得て

ニューヨークで
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《それは2001年9月、自作の『アイ・ガット・マーマン』を初めてアメリカに持っていき、上演される直前に起きた。「米中枢同時テロ」である》


僕はニューヨークのマンハッタンに滞在していて、劇場でのリハーサルに備えていたときでした。日本から電話があり、テレビをつけたら、世界貿易センタービルに飛行機が突っ込む衝撃的な映像が繰り返し流れていました…。

それから数日後、僕は「何か手伝えることはないだろうか?」と考え、ダウンタウンへ行って、被災者を手伝うボランティアに志願します。建物が燃えた後の灰がたちこめ、割れたガラスが散らばり、臭いがすごかった。けれど、居ても立ってもいられない気持ちだったのです。

そこには、行き場を失った避難民がたくさんいました。何もかもが不足していて、「ウオーター」とか「フード」「バッテリー」などを求める声が飛び交っている。「これならば手伝えるかも」と、僕は消防隊員らと一緒になって、買い出し役を務めました。


《『アイ・ガット・マーマン』の本公演はテロの影響で開幕が少し遅れたものの、無事開催された。だがその帰途、タイのバンコクで今度は交通事故に。命にかかわる重傷だった》


僕はタクシーの後部座席に乗っていたのですが、そこへ、暴走族のような車がぶつかってきました。タクシーの運転手はハンドルを奪われて、電信柱にドーンと…。僕はフロントガラスを突き破ってほうり出されたのです。

血が大量に流れていて、呼吸ができなかったので、懸命に鼻から息を吸いました。ふーっと、すごく気持ちがよくなって、その瞬間、僕は意識が朦朧(もうろう)として、きれいな白い光のようなものを見た気がします。「まだお前は生きたいのか?」と言葉にならないような問いかけを感じて、「そうだ、僕にはまだやりたいことがある」って答えたように思うのですが…。