全国初の車いす警備員 障害者の社会進出「挑戦の道筋に」

大学で検温と学生らの入室手続きを行う全国初の車椅子の警備員、濱田久仁彦さん=5月31日午前、埼玉県川越市(中村昌史撮影)
大学で検温と学生らの入室手続きを行う全国初の車椅子の警備員、濱田久仁彦さん=5月31日午前、埼玉県川越市(中村昌史撮影)

東京五輪・パラリンピックの開催が迫り、障害者の社会進出や活躍に関心が高まる中、街の治安維持に貢献する車いすの警備員が全国で初めて誕生した。4月からインターンとして、埼玉県内の大学で業務を始めた濱田久仁彦さん(61)。「障害者の新たな活躍の場へ道筋を描ければ光栄。機会があれば、パラリンピックにも関わってみたい」と力を込める。

「おはようございます。検温をお願いします」。同県川越市の尚美学園大にはつらつとした声が響いた。受付で車いすに座った濱田さんは検温とIDカードの確認などを手際よく進める。「若い学生さんに元気をもらっている」と顔をほころばせ、やりがいを語った。

1歳のときポリオ(小児まひ)となり両足に障害が残った。高校で学ぶ傍ら、車いすバスケットボールクラブに加入。民間企業で勤務していた昭和55年、クラブの仲間の勧めで県の障害者採用枠に応募し、県警事務職員に採用された。

配属されたのは鑑識課。指紋採取や管理に携わり、事件捜査、遺体の身元特定などに尽力した。すぐれた技能者が指定される「指紋鑑定官」に任命されるなど、一貫して鑑識畑を歩み昨年退職。今年1月、県警OBの誘いで警備会社「ゼンコー」に再就職した。

イベントセキュリティーなどを手がける同社は、女子硬式野球チームを運営。障害者スポーツの支援にも取り組む。車いすバスケの経験があり、鑑識の専門分野で実績を重ねた経歴を評価したといい、濱田さんも「新型コロナウイルスで雇用も厳しい今、機会を頂いた」と意気込む。

警備会社の業界団体「全国警備業協会」によると、車いすの警備員は全国初。入社後は基本的教育や訓練に実技も追加されるなど、入念な準備が続いた。日本でも障害者への理解が広がり、バリアフリーの着実な浸透も感じているという濱田さんは「健常者の警備員に比べれば力は弱い。弱いからこそ向き合う人が耳を傾け、関心を持ってくれるはずです」と不安はない。

同社での役名は「本社付きPSS(パラスポーツサポート)担当」となった。「障害を言い訳にせず、時間がかかっても、克服する挑戦をしてみたい」と先を見据え、来るパラリンピックにも「一生で一度あるかないかの機会。チャンスがあれば何らかの形で貢献したい」と目標を語った。(中村昌史)