正論7月号

日本製小型原発を活用せよ 産経新聞論説委員 長辻象平

山を切り崩して設置された太陽光発電パネル
山を切り崩して設置された太陽光発電パネル

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脱炭素社会への転換が国際的な巨大潮流となる中で菅義偉政権は二〇三〇年度までに、二酸化炭素(CO2)に代表される日本の温室効果ガス(GHG)の排出量を一三年度比で四六パーセント削減するという衝撃的な目標を国内外に公表した。

地球温暖化防止の国際ルール・「パリ協定」で日本が世界に公約していたこれまでのGHG削減量は二六パーセントだった。

産業界や経済産業省では、この二六パーセント目標でさえ達成にはかなりの痛みを伴うと受け止めていたにもかかわらず、バイデン米大統領に促された形での今回の見直しで、削減規模は一挙に二倍近くに跳ね上がったのだ。しかも残された期間はわずか九年――。夢の次世代炉が日本に 政府は太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの積み増しで目標に近づける考えだ。とりわけ太陽光への依存が高い。

風力に比べて短期間での拡充が可能なためだ。四六パーセントという数値の決定に深く関わったとされる小泉進次郎環境相も太陽光発電の信奉者のようである。

小泉氏は住宅などへの太陽光パネルの設置義務付け構想を抱いているようだが、強制される国民は迷惑だし、はたして太陽光発電に、期待に応えるだけの削減力があるのだろうか。それが大きな問題だ。

結論から言うと脱炭素社会へ至る道は原子力発電を抜きにして前に進めない。エネルギー資源に乏しい島国の日本の場合、好き嫌いを言っていられる立場ではないのだが、東京電力福島第一原発事故による国民の原発不信には根強いものがある。

危険と同義語化した感さえある原発への強固な不信感の超克には画期的な安全性の高さを備えた新型原発の登場を待つしかないが、実は日本には重大事故とは無縁の次世代原発が試験研究炉として実在しているのだ。

この次世代原発は二〇五〇年のカーボンニュートラル(CO2排出の実質ゼロ)の実現に不可欠の存在であり、しかも分散型エネルギー源となる小型モジュール炉(SMR)ときている。

今後、世界の脱炭素をリードするエネルギーの「青い鳥」は、日本で巣立ちの時を待っているのだが、海外から寄せられる熱い視線に比して、なぜか国内での知名度は高くない。

環境省を中心に再生可能エネルギーの拡充ばかりを夢見る姿は、灯台下暗しを教えてくれるメーテルリンクの童話の寓意と二重写しの状態だ。

政権の中枢が甘い夢想から覚醒し、安全性を高めた原子力の活用に着手しなければ、日本は脱炭素をめぐるパワーポリティクスの奔流を乗り切れずに沈む。

再エネ過度信奉の危うさ

この次世代原発について紹介する前に、再生可能エネルギーに対する過大な期待感について触れておきたい。原発に批判的な立場の報道などでは、最近一年間に運転を開始した全国の太陽光発電施設の能力について「原発一基に相当する」などと誇らしく表現されるが、これが大きな誤解を国民にまき散らす元なのだ。

太陽光発電の能力が一〇〇万キロワットで大型原発と同じであっても、夜には発電できないし、雨天にも弱い。今年一月には大雪による発電量の落ち込みなどで全国的な電力の逼迫が起きている。

それに対して原発は一年を通してフル出力での連続運転が可能なのだ。原子力発電と太陽光発電の「キロワット時」能力には天と地ほどの差があること知っておくべきなのだ。

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「正論」7月号 主な内容

【大特集 日本滅ぼす平和ボケ】

非核の妄執を排す 真の防衛論議を 作家 石原慎太郎

台湾有事へ欠く政治の当事者意識 東洋学園大学客員教授・元空将 織田邦男

軍事忌避続けば安全保障は破綻 評論家 潮 匡人

誰も想定していない尖閣有事の住民避難 ジャーナリスト 仲村 覚

経済安全保障に鈍感な日本社会 経済ジャーナリスト 井上久男

外資撤退で中国のアキレス腱を衝け ジャーナリスト 濱本良一

中国が仕掛けるハイブリッド戦争 名桜大学国際学群准教授 志田淳二郎

産業競争力奪うサイバー攻撃の脅威 中曽根康弘世界平和研究所主任研究員 大澤 淳

国家機能マヒさせる身代金要求型ウイルス NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト 松原実穂子

危機から目を逸らすメディアの大罪 ブロガー 藤原かずえ

<反共鼎談>「中国こそ脅威」と堂々と言おう 反共3兄弟 評論家 石平/静岡大学教授 楊海英/産経新聞台北支局長 矢板明夫

戦狼外交とSNSで目指す「中国の夢」 ジャーナリスト 福島香織

日本人も使う中国プロパガンダ 日本ウイグル協会副会長 アフメット・レテプ

【特集 「脱炭素」に反対】

国益損じるより今こそ製造業強化を 一般財団法人「産業遺産国民会議」専務理事・産業遺産情報センター所長 加藤康子


中国利するだけの愚かな温暖化対策 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志

日本製小型原発を活用せよ 産経新聞論説委員 長辻象平

イメージだけで石炭火力手離すな 「君は日本を誇れるか」特別版 作家 竹田恒泰

▼武漢研究所起源説はもう陰謀論ではない 筑波大学システム情報系准教授 掛谷英紀

▼アメリカの分裂は始まっている 麗澤大学准教授 ジェイソン・モーガン

▼河野談話「上書き」する新談話を検討せよ モラロジー道徳教育財団道徳科学研究センター教授・麗澤大学客員教授 西岡力

【特集 日本共産党に騙されるな】

革命路線に変わりなし 過去と現在の主張から読み解く 公安調査庁次長 横尾洋一×作家・元外務省主任分析官 佐藤優

コロナ禍に乗じて党勢拡大 元板橋区議(元日本共産党区議団幹事長) 松崎いたる

▼阿南惟幾 戦後日本への〝遺言〟 大阪観光大学国際交流学部講師 久野潤