【美村里江のミゴコロ】本物のシシャモ - 産経ニュース

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美村里江のミゴコロ

本物のシシャモ

さて、先週書いた「アブラビレ」であるが、実は身近な食卓の魚「シシャモ」にもある。シシャモ、アユ、ワカサギなどは「キュウリウオ目」。名前そのまま胡瓜(きゅうり)のような香りがする魚たちである。

「シシャモって昔は給食に出ていたなぁ」「けど今はあまり獲(と)れなくて高いのよね。安いのは偽物」。こんな会話を交わしたこともあるだろう。一方、「本物のシシャモは産卵で川に戻る魚」「現在、シシャモが獲れるのは北海道の特定の河川だけ」というのはご存じだろうか。

トレーニングでお世話になっている魚好きの先生に教えていただいたのだが、まさかこれほど獲れなくなっているとは。普段、シシャモとして売られているのは「カラフトシシャモ」ということは知っていたが、獲れる場所が海と川という大きな差も考えたことがなかった。

家に帰って本職(医学者だが応用で魚も研究)の夫に聞いたところ、「そうだよ。僕もシシャモは大好きだけど、多分一度も本物は食べてない」とのこと。そこまで超レア魚だったのか、本シシャモ…。

少し調べてみれば、漁獲期の10~11月限定で、現地では「シシャモ寿司(ずし)」も食べられるそうだ。海魚に比べて川魚は流通量が圧倒的に少ないが、「良質な油」「繊細な身」が持ち味である。コイ科の魚の場合「泥臭い」といわれることもあるが、それも処理がうまければ問題なくおいしい。

つまり「本シシャモ寿司」は、もう確実においしいと思われる。現地でのみ期間限定販売なのも信頼できるポイント。コロナ禍を乗り越えた後に行ってみたい場所が、一つ増えた。

ちなみに、近年きらびやかな名前の「〇〇サーモン」ばかりで、本物のサケがスーパーにも回転寿司にも少ない事情。端的に書くと、ロシアのお目こぼしがなくなったためだ。戦後の重要なタンパク源として食卓を支えたサケだが、実はロシアへ戻るサケを長らく獲っていた。これを「そろそろやめて」と止められ、食べられる機会が激減したとされる。

警察犬並みの鋭い嗅覚をもとに、故郷の川へ戻ってくるというサケ。河川工事で泥が入っただけでも、遡上(そじょう)への影響は深刻という話も聞く。

サケもシシャモも故郷の川へ順調に戻ってほしいと願う、食い道楽兼釣り人の私である。