話の肖像画

いつの日かトニー賞を 演出家・宮本亞門⑲

米ニューヨーク・ブローウエイでのミュージカル「太平洋序曲」プレビュー公演。出演俳優と共に=平成16年11月
米ニューヨーク・ブローウエイでのミュージカル「太平洋序曲」プレビュー公演。出演俳優と共に=平成16年11月

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《宮本さんの『太平洋序曲』を絶賛した米ブロードウェーの巨匠、ソンドハイム氏の「ニューヨークで上演したい」という発言は2年後の平成14(2002)年、リンカーンセンターで実現する》


ソンドハイムさんがその構想を、世界文化賞授賞式(12年10月)で口にしたとき、僕はまったく寝耳に水。「えっ? ウソでしょう?」って。ところが、その数カ月後にはもう、リンカーンセンターの話が具体化していたのです。それからスポンサー集めなどに1年くらいかかったでしょうか。

リンカーンセンターなどアメリカでの公演はおかげさまで大好評でした。あの厳しいニューヨーク・タイムズ紙の劇評などでも絶賛の嵐。アメリカ版のオリジナルとは「まったく違うものをつくり上げた」という点が大きく評価されたのだと思います。リンカーンセンターの公演が成功裏に終わった後、ニューヨークの小さなクラブで祝杯をあげました。僕がホントにやりたかったもので認められた。やっと演出家として一人前になれた気持ちになれましたね。


《宮本版『太平洋序曲』は2年後の16(2004)年、いよいよブロードウェーに進出する。東洋人演出家の作品がオン・ブロードウェーで上演されるのは史上初の快挙だった》


ただ、僕にしてみれば、リンカーンセンターでやった方が「数百倍」良かったと思う。ブロードウェーの劇場は空間的にもあまり合っていなかった。

そして、このころから少し「風向き」が変わったような気がします。僕はその理由を(アメリカ版にはなかった)原爆のシーンを入れたことにあると思う。ショーウインドーのようなフェスティバル(リンカーンセンターなどでの公演)では許せても、ブロードウェーという“ムラ”の中では原爆はタブーだったのでしょう。「アメリカを批判するのか」「真珠湾攻撃はどうなんだ」などと言われました。

だけど、ワイドマンさんが書いた脚本はもともと、「アメリカ批判」だと僕は思う。アメリカが他の国に対して何をしたのか? がテーマなのです。ところが、観光客じゃなく(プロとして)“ムラ”へ入ってゆくと、風当たりが強くなる、思想とぶつかるのです。そのことを目の当たりにしました。