佐藤輝の豪打で覚醒 関学大の遅咲き左腕、ドラフト候補に

目標はプロ野球選手。だが現状のままでは、その夢を実現させるのは難しいと思い知らされた試合が昨秋にあった。

9月12日の近畿大1回戦(大津市皇子山球場)。1-0とリードした九回にリリーフで登板した。1死から迎えた打者は、翌月行われたプロ野球のドラフト会議で4球団から1位指名され、阪神に入団する佐藤輝だ。2ボール2ストライクから150キロのストレートを投げ込んだ。次の瞬間、球はバックスクリーンに飛び込んでいた。チームは延長戦の末に敗れた。

翌日の2回戦(同)でも屈辱を味わった。1点リードの八回2死満塁から、またも佐藤輝に打たれた。走者一掃の逆転二塁打。佐藤輝には自身が1年生の秋にも一発を献上しており、新リーグ記録となる佐藤輝の通算14本塁打のうち、2本打たれたのは黒原だけ。真っ向勝負の証明でもあるが、受けた傷も深かった。

再び全国の舞台へ

「プロに行くためには、あれぐらいの選手を抑えないといけない」とレベルアップを決意した。昨秋のリーグ戦終了後に左ヒジの遊離軟骨除去手術を受け、投球フォームの改造にも取り組んだ。課題だった制球力をつけるため、右足の踏み出しを修正し、体が流れないようにした。バランスを考え、常にセットポジションからのクイックで投げるようにした。

気持ちの部分も強くなった。今年の春季リーグは新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言の発令により3週間中断し、難しい調整を強いられた。しかし、中断明けの5月15日に行われた近大1回戦(大阪市南港中央球場)では2失点完投。「リーグ戦再開はうれしい。プロが目標で(スカウトに)見てもらわないと始まらないですから」と自信のコメントを残した。

150キロ超のストレートの力強さに、カットボール、スライダー、チェンジアップといった変化球の精度がアップし、覚醒した今季。近大、立命館大との3回戦、同志社大2回戦の3試合で完封し、佐藤輝に見せつけられたレベルの高さ、数々の敗戦で受けた屈辱を成長の糧にした。「これまで負け続けてきたからこそ逆境をはね返す力、泥臭さがある」と自身を見つめている。

春のリーグ戦を制したことで、各リーグの優勝校が集う全日本大学選手権の出場が決定。本荘監督が4年生だった平成5年以来、実に28年ぶりだ。「やっと出られた。でも出て終わりじゃない。勝たないと意味がない。相手に点を取られない、ていねいな投球をしたい」と高校3年生夏の甲子園大会以来となる全国の舞台に向けて力を込める。

目標とするプロ野球選手は特にいないという。佐藤輝のプロでの活躍については「すごいですね」と驚くばかり。「球速も大事ですが、質のいいボールを投げたい。そして負けない投手になりたい」。今春の5勝1敗を加えた大学の通算成績は13勝16敗。大学生活最後の秋季リーグで大きく勝ち越し、佐藤輝が輝くプロの門をたたく。 (鮫島敬三)