イスラエル「身内の反乱」が致命傷に ネタニヤフ首相

【カイロ=佐藤貴生】退任する見通しとなったイスラエルのネタニヤフ首相は、イランやパレスチナへの強硬姿勢で治安に敏感なユダヤ人右派の支持を獲得し、長期政権を築いた。首相在任期間は通算15年に達し、建国の父であるベングリオン初代首相を超えて同国史上最長となった。しかし、ここ数年は強引な政治手法や収賄疑惑などで求心力が衰え、最後は右派政治家による「身内の反乱」にとどめを刺された。

「世紀の詐欺行為だ」。極右政党「ヤミナ」党首のベネット元国防相が中道・左派との連携を表明した5月30日、ネタニヤフ氏はこう述べて非難した。イスラエル政界の「王」とまで称された同氏が追い詰められた瞬間だった。

ネタニヤフ政権は5月中旬、イスラム原理主義組織ハマスとの軍事衝突で、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに激しい空爆を行った。国際的な非難に対し、ネタニヤフ氏は「自衛権」を盾に正当性を強調。得意分野の治安維持で妥協しない姿勢を示すことで、自身の元を離れた右派の盟友を引き戻す狙いもあったようだ。

実際、ネタニヤフ政権で国防相などを務めたベネット氏はハマスとの戦闘開始後、中道・左派との連立交渉を一時中断し、ネタニヤフ氏を含む挙国一致政権の樹立に傾いたとされる。

しかし、衝突が11日間で収束して停戦合意が維持されたこともあり、ベネット氏はネタニヤフ氏とたもとを分かつことを決断。2日にまとまった野党の連立合意にはベネット氏のほかリーベルマン元国防相、サール元内相というネタニヤフ政権の閣僚経験者2人も名を連ねた。

3人が率いる右派3政党は、3月下旬の国会選(定数120)で計20議席を獲得した。離反が右派の票の分散につながり、ネタニヤフ氏を窮地に追い込んだ格好だ。

離反の一因となったのが、ネタニヤフ氏に浮上した腐敗疑惑だった。イスラエル検察は2019年11月、通信大手企業に政策面で便宜を図る見返りに好意的な報道を行うよう求めたなどとして、同氏を収賄や詐欺、背任の罪で起訴。公判も始まり、同氏の退陣を求めるデモが相次いだ。

ネタニヤフ氏は首相在任中は訴追されないとの法律の制定を目指してきたとされるが、野党に転じることで実現は困難になりそうだ。

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