主張

ワクチン支援 いち早く台湾に提供せよ

困ったときの友が真の友だ。日本の隣人、台湾との間では、過去に何度も助け合いがあった。

厳しい水際対策で新型コロナウイルスを抑え込んできた台湾で感染が急拡大している。中国の横やりか、ワクチン調達に苦戦している。

日本は、接種予定のない英製薬大手アストラゼネカのワクチンを確保しており、政府が台湾への提供を検討中だ。茂木敏充外相は5月28日の会見で「わが国との関係を考え、(台湾へのワクチン支援を)しっかり検討していきたい」と述べた。

昨年、中国の輸出規制で日本がマスク不足に陥った際には、台湾から約200万枚の医療用マスクが届けられた。東日本大震災後、いち早く義援金を届けてくれたのも台湾だ。その恩に報いる好機でもある。できるだけ多くのワクチンを、速やかに提供したい。

日本は、アストラゼネカと年内に約6千万人分のワクチン供給を受ける契約を結んだ。だが、接種後にまれに血栓が生じる事例が報告され、承認したが当面は公費接種の対象になっていない。日本の人口分のワクチンは米製薬大手のファイザー、モデルナ製でほぼ確保できたことが大きい。

台湾は一貫してアストラゼネカのワクチンを調達してきた。超低温管理が不要で、使い勝手の良さがある。ただし、調達数は、人口約2300万人に対して約85万回分にとどまっている。調達難航の理由について台湾の蔡英文総統は中国の妨害工作を挙げた。たとえば、独バイオ企業ビオンテックと契約寸前だったが、「中国の介入で契約できていない」という。

その中国は台湾にワクチン提供を申し出たが、台湾は中国製ワクチンは信用できないとして拒否している。

蔡氏は日本の提供検討を受けて「深い友情に、心から感謝します」とツイッターへ投稿した。自由と民主主義の台湾へのワクチン支援は、日米英豪や欧州連合(EU)諸国が目指す「台湾海峡の平和と安定」にもつながる。

日本は、アストラゼネカのワクチンのうち4500万人超分を国内生産の予定だ。台湾はじめ支援を要する国に提供を急ぎたい。

中国外務省報道官は5月31日、「政治的パフォーマンスや内政干渉に断固反対する」と日本の提供検討を批判した。政府は非人道的な批判を意に介す必要はない。