【台北=矢板明夫】中国の民主化運動が弾圧された1989年6月4日の天安門事件から32年になるのを前に、香港で2日、事件の資料を展示する「六四記念館」が当局の指導により一時閉館に追い込まれた。昨年6月末の香港国家安全維持法(国安法)の施行後、初めて迎える6月4日を直前に控え、民主派への圧力が一段と強まっている。
同記念館は香港の民主派団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」(支連会)の主導で、5月30日にリニューアルオープンしたばかり。中国人民解放軍が民主化を求める学生らを武力弾圧した天安門事件当時の写真などが展示されていた。
しかし1日、同館に香港政府の職員が現れ、「公衆娯楽場所」の営業許可証がないなどと警告。支連会は2日、法律専門家と相談して対応を決めるため、同館の一時閉館を発表した。
支連会の秘書長、蔡耀昌氏は「当局の主張を受け入れたわけではないが、慎重に対応する。私たちは法律の範囲内でしか活動しない」と話している。
香港では一国二制度の下、ビクトリア公園で毎年6月4日に犠牲者追悼集会が行われてきた。今年も昨年に続き当局によって禁止されたが、同館には献花台が設けられ、3日間で約600人の市民が訪れていた。
昨年の6月4日には、当局の禁止措置にもかかわらず、ビクトリア公園などに市民1万人以上が集まり追悼集会を行った。今年は国安法施行を受け、当局は徹底的に取り締まる構えだ。