主張

大坂の全仏棄権 復帰へ周囲の支えを願う

女子テニスの大坂なおみが、四大大会の全仏オープンを棄権した。

1回戦の勝利後に記者会見を拒否して罰金を科されるとともに、四大大会からの追放もあり得ると警告されていた。

残念な結果だが、周囲は彼女の心身の回復と、コートへの復帰を全力で支えてほしい。

大坂は自身のツイッターで「2018年の全米オープン以降、長い間鬱に悩まされていた」と告白し、「大会や他の選手、自分の健康にとっての最善は、みんながテニスに集中できるように私が棄権することだ」と決断の理由を説明した。

苦しみ抜いての判断だったろうことには同情する。ただ、告白が1日早ければと残念に思う。大坂は会見拒否の処分決定後、「怒りは理解の欠如、変化は人々を不快にさせる」とツイートし、大会側との対立姿勢を強めていた。

これに対し、女子ツアーを統括するWTAは「取材対応は選手の責務」と指摘し、多くのトップ選手からも「会見は仕事の一部」などの声が相次いだ。

大坂は大会前から「アスリートの心の健康状態が無視されていると感じていた。自分を疑うような人の前には出たくない」と会見に応じない意向を表明していた。

大会側は試合後の取材対応を義務付けているが、「けがなどの場合をのぞく」と免責事項も設けている。鬱は「精神のけが」であるともいえる。一人で悩むことなく、しかるべき診断書を提出して大会側と冷静に話し合うことも可能だったはずだ。

厳しいようだが、鬱を隠したかったのであれば、それは誤りである。鬱は恥ずかしいことでも何でもなく、誰もがかかり得る病で、治る病でもある。

鬱に対する社会の偏見は今もあるとして、大坂が公表の上でこれを克服する戦いに臨むのであれば、拍手を惜しまない。

大坂は今や、誰もが認める世界のトップ選手である。黒人やアジア人への人種差別問題についても常に発言を求められてきた。自身が急速に特別な存在となったことに当惑し、大きなプレッシャーとなっていたのかもしれない。

だがそれは、世界が大坂にアスリートとして、また発言者としての価値を認めたからだ。しばしの休息の後に、またテニスコートに帰ってきてほしい。