新型コロナウイルスワクチンの特許をめぐり、一時放棄すべきか否かが国際的な議論となっている。バイデン米政権が放棄を表明し、欧州で反発が上がった一方、中国が対立を深める米国と同じ立場をとるという異例の構図。特許放棄の目的は先進国と途上国のワクチン接種の格差是正だが、「ワクチン外交」をめぐる関係国の思惑も交錯し、決着は見通せない。(ワシントン 塩原永久、北京 三塚聖平、パリ 三井美奈)
バイデン大統領は5月17日、ワクチン計8千万回分を6月末までに国外に無償提供すると発表した際、「ロシアと中国がワクチンを使って世界に恩を売ろうとしている」と強調。感染症対策で指導力を発揮し、中露のワクチン外交に対抗する狙いに言及した。特許の一時放棄もその一環だ。
米政権はこれまで国内のワクチン普及を優先させる方針を貫き、ワクチン調達に苦しむ途上国などから批判を受けていた。この間、中国はワクチン外交を活発化させ、援助先は5月中旬までに80カ国余りに上る。