無戸籍者 7割の自治体が把握も支援届かず 主要自治体アンケート

全国の県庁所在地や政令指定都市、東京23区の計74自治体を対象に実施した無戸籍者支援に関するアンケート
全国の県庁所在地や政令指定都市、東京23区の計74自治体を対象に実施した無戸籍者支援に関するアンケート

親の事情などで出生届が出されなかったため、戸籍のない「無戸籍者」について産経新聞社が全国の県庁所在地や政令指定都市、東京23区の計74自治体にアンケートを実施したところ、回答のあった73自治体のうち、7割以上にあたる57自治体が無戸籍の住民を「把握している」と答えていたことが1日、わかった。一方で、支援が十分できていると回答したのは8自治体にとどまっており、自治体の支援の在り方に課題のあることが浮き彫りになった。

無戸籍者の問題をめぐっては、大阪府高石市で昨年9月、無戸籍の高齢女性が餓死。市側は女性の情報を十分に把握できておらず、支援につなぐことができていなかったことがわかっている。

アンケートは今年4月、各地の担当者らに質問票をメールなどで送って実施。「把握している」とした57自治体のうち、43自治体が人数も回答。最も多かったのは横浜市の44人で、福岡市27人▽熊本市18人▽さいたま市18人-と続いた。「数人」や「10人以下」とした自治体もあった。


「現状で支援が十分と考えているか」の問いに対し、73自治体のうち43自治体が「どちらともいえない」と回答。「足りない部分もある」と答えたのは12自治体、「全然できていない」と答えたのは3自治体だった。

無戸籍状態を解消するには、市区町村や法務局に相談した上で、場合によっては裁判手続きなどを経て、市区町村に出生届などを提出して戸籍に記載される必要がある。アンケートで主な支援策を自由記述で尋ねたところ、こうした手続きを踏まえ、法務局との連携を前提に「住民票を作成し必要な行政サービスを提供すること」や「無戸籍解消に向けたアドバイス」などを挙げる自治体が大半を占めた。

今回のアンケートで相談窓口を「設けている」と答えた自治体は73自治体中21自治体で、全体の3分の1以下にとどまった。ただ、窓口を設置している21自治体でも、大半が専従ではなく「(従来の)戸籍係が対応している」などとした。

国も無戸籍者の問題解消に乗り出している。離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」とみなす民法の「嫡出推定」の規定が無戸籍者を生み出す要因になっているとされるため、法制審議会(法相の諮問機関)の親子法制部会が今年2月、規定の見直しを含む法改正の中間試案をまとめた。


無戸籍者 親が出生届を出さなかったなどの理由で戸籍がない人。法務省によると、平成26年9月10日~今年4月10日で累計3527人確認され、解消した人もいるが、同日時点で862人が無戸籍のままとなっている。民間支援団体は約1万人と推計。出生届を出さない理由はさまざまだが、「離婚後300日以内に生まれた子供は前の夫の子供と推定する」という民法の「嫡出推定」の規定の適用を避けるためというケースが、7割以上を占めるとされる。

大阪府高石市の無戸籍女性餓死問題 令和2年9月、市内の民家で当時78歳だったとみられる住人女性が餓死しているのが見つかり、同居の息子も衰弱して入院した。女性は約20年前からこの家で内縁の夫と息子と3人で暮らしていたが、平成28年8月に夫が死亡。女性は夫の遺産を頼りに息子と2人で暮らしていたが、令和2年夏ごろに遺産が底をつき、最後は水や塩で飢えをしのいでいた。女性は夫の死亡届を提出する際、自身が無戸籍であるということについて、市の窓口でやり取りをしたとみられ、この機会に支援の窓口につなぐなどすれば、餓死を防げた可能性もある。