地ビールで地産地消促進 埼玉・所沢の「野老社中」 - 産経ニュース

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地ビールで地産地消促進 埼玉・所沢の「野老社中」

野老ブラウニーをグラスに注ぐ「野老社中」社長の吉村英二さん=埼玉県所沢市(深津響撮影)
野老ブラウニーをグラスに注ぐ「野老社中」社長の吉村英二さん=埼玉県所沢市(深津響撮影)

埼玉県所沢市の地ビール「野老(やろう)ゴールデン」「野老ブラウニー」が、同県を代表する地ビールの一つとして注目されている。昨年の販売本数は計約1万5千本に達し、贈答文化の活性化を目的に制定された「日本ギフト大賞2021」で「埼玉賞」を受賞した。地産地消の促進などを狙った「コミュニティービール」を標榜(ひょうぼう)し、地域経済の「東京依存」脱却を掲げるユニークな商品でもある。

野老ゴールデンと野老ブラウニーは、所沢市の地ビール企画・販売会社「野老社中」が販売している。野老ゴールデンは平成23年、野老ブラウニーは令和元年から販売が始まった。

特徴は地産地消への徹底したこだわりだ。いずれのビールも原材料に所沢市産の大麦を使い、野老ブラウニーは、香り付けをする薫材にも地元の雑木林のコナラを用いている。

市内での消費を喚起するために味付けにも工夫をこらした。「土産物」として差別化を図るために多くの地ビールが取り入れている過度な香り付けを避け、家庭の料理に合うようにすっきりとした後味に仕上げた。「所沢で暮らす人に、普段の生活の中で食事と一緒に楽しんでもらえる味付けにした」と社長の吉村英二さん(51)は語る。

狙いは当たり、野老ゴールデンと野老ブラウニーの売り上げの約8割は所沢市内で占められている。

吉村さんは10代から所沢市で暮らし、消費者団体の機関誌の編集などに携わってきた。ビール造りに取り組もうと思ったきっかけは、所沢市が経済的に東京に依存し過ぎているという問題意識だったという。

「所沢に住んでいながら所沢に関心を持たない人が増え、その結果、地域の『らしさ』が失われる」

「埼玉都民」という言葉に象徴されるように、都心への交通アクセスが良い埼玉県内には東京のベッドタウンが多いが、とりわけ所沢市は東京への経済的依存度が高いとされる。環境省の集計によると、地域経済の自立度を示す「地域経済循環率」の平成27年時点の値は、埼玉県全体の約77%に対し所沢市は約63%にとどまっている。

地域の経済的な自立を促すために新たな事業を始めたい-。こう思い立った吉村さんは、地元の食文化に根付いてきた麦に着目し、少ない初期投資で始めることができるビール造りに取り組むことを決めた。

「ビールは食卓の中心に置かれる。人と人をつなげるものでもある」

商品の知名度が上がってきた今、吉村さんが願うのは、野老社中のビール造りがモデルケースとして認知され、同じ理念を掲げる事業者が地元に増えていくことだ。

「自分の取り組みを見て新しく始める人が出てきたらうれしい。そういった人たちと協力して地域経済循環をより高めたい」と力を込めた。(深津響)