話の肖像画

アジア3部作で新たな挑戦 演出家・宮本亞門⑯

結局、『香港ラプソディー』のタイトルで、不本意ながら、主人公を日本人に変え、記者が戦車の前で殺された人の恋人から香港で話を聞くという設定にしました。政治的な内容は薄めるだけ薄めて、「ラブストーリー・イン香港」みたいな話になった(苦笑)。

これじゃあ、革命家の話じゃありません。ちょうど僕がコーヒーのCMに出ていたころでもあったので、お客さんは入ったのですが、日本での批評には厳しいものがありましたね。

《アジア3部作の2年目はインドをテーマにした『サイケ歌舞伎 月食』、最終年は、アニミズムを取り上げた『熱帯祝祭劇 マウイ』。いずれもアジアにかかわる実験的舞台だったが、やはり批評は芳しいものではなかった》

確かに新聞の劇評などはほとんどが「ノー」。「単なる無駄遣い」などと厳しい批判もされました。でもね、著名なジャーナリストが(2作目の)『月食』を「このような作品が日本でつくられたことがすごい。とにかく面白い」とほめてくださったり、このアジア3部作には今でもすごいファンがいるのです。

《「アジア3部作」の評価へのチャレンジは大きな意味があったと思う》

テレビでは、明るくニコニコと語っている僕が、裏ではまったく違う政治的な内容の舞台をつくっている…。「こいつはいったい何者なんだ?」って批評家も混乱したんじゃないのかな。

僕としては、人気先行に違和感を覚えていたこともあって、「分かりやすいエンタメ」ではないものをやってみたかった。バランスを取るというか、探るというか、チャレンジしたかったのです。(聞き手 喜多由浩)

(17)へ進む