話の肖像画

アジア3部作で新たな挑戦 演出家・宮本亞門⑯

演出家の宮本亞門さん(川口良介撮影)
演出家の宮本亞門さん(川口良介撮影)

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《「アジア」をテーマにした新たなチャレンジ。最初の舞台は、中国で起きた天安門事件(平成元年)をモチーフにしたいと考えたのだが…》

やるならば本気でやらないとダメだ、と思い始めました。天安門事件に反対し、アメリカへ逃げたリーダー格の2人を主人公にしようと思い、手記を読んだり、雑誌の記事などをいろいろ調べたり、「これは面白いぞ」と確信しました。

ところが、そのアイデアをプロデューサーに話すと、たちまち難色を示されました。「政治的な内容は困る」「あまりにも(事件と)近過ぎる」というのです。中国政府や事件のことを非難した雑誌が事実上、廃刊に追い込まれたりして、メディアも恐怖にかられて及び腰になっていました。そんなときに舞台化をすれば、どうなるか分からない…。不安は理解できましたが、僕はどうしてもやりたい。そう決意していました。

《舞台は「政治的過ぎる」と難色を示すプロデューサーとの間で〝妥協案〟が検討されることに。5年3月、『香港ラプソディー』として上演される》

僕としては、ブロードウェー・ミュージカルの『サウンド・オブ・ミュージック』も『ミスサイゴン』も『ウエストサイド・ストーリー』だって、元来は政治的なメッセージを含んでいるではないか、という思いがあったのですが、どうしても折り合えません。プロデューサーいわく、「中国のことは序幕の一瞬だけ」「ほかは全部、香港での話にしてくれ」と…。