イスラエル首相、退陣の可能性 野党連立進展

30日、エルサレムにあるイスラエル議会で演説するネタニヤフ首相(UPI=共同)
30日、エルサレムにあるイスラエル議会で演説するネタニヤフ首相(UPI=共同)

【カイロ=佐藤貴生】政治の混乱が続くイスラエルで野党の連立協議が進展し、ネタニヤフ首相(71)が窮地に陥っている。ネタニヤフ氏は5月中旬、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスへの空爆で求心力回復を狙ったが、収賄疑惑を抱える同氏に対して「反ネタニヤフ勢力」が結集し、国会(定数120)の過半数を制する可能性が強まったためだ。連続12年間、首相を務めた同氏が退陣する可能性が出てきた。

ユダヤ人極右政党「ヤミナ」党首のベネット元国防相は5月30日、「全力を挙げて(反ネタニヤフ勢力の)政権発足に協力する」と述べ、連立協議を進める中道「イェシュアティド」党首のラピド元財務相と連携する意向を表明した。

3月23日の国会選を受け、第1党となった右派「リクード」党首のネタニヤフ氏が政権発足協議を進めたが期限切れで失敗。続いて第2党のイェシュアティドのラピド氏が連立協議を委ねられ、同氏の期限も6月2日に迫っている。

国会選で7議席を獲得したヤミナの協力抜きでは左右両派とも政権が発足できず、ベネット氏は事実上のキングメーカー。同氏はハマスとの軍事衝突が起きた際、ネタニヤフ氏のリクードを含む挙国一致政権の樹立を唱えたが、ハマスが停戦で合意したことなどからラピド氏らとの協力にかじを切ったとみられる。

ベネット、ラピド両氏は、交代で首相を務める合意を交わしたとの観測も出ている。

ベネット氏の態度表明を受け、ネタニヤフ氏は右派の有権者の意向を無視する「世紀の詐欺行為」だと非難。敵対するイランやハマスなどに触れて、「左派政権は治安と将来を危機にさらす」と主張した。同氏側は「反ネタニヤフ勢力」の切り崩し工作を行っており、政権発足の成否は予断を許さない。

収賄罪などで起訴され公判が始まっているネタニヤフ氏は、首相在任中は訴追されないとする法律の制定を狙っているとされ、首相の座を死守する構えだ。ラピド氏主導の協議が暗礁に乗り上げれば、2019年4月以来5回目となる国会選の可能性が強まる。

また、「反ネタニヤフ勢力」は〝寄り合い所帯〟のため、パレスチナ問題などで政策の方向性が異なる。新政権が発足したとしても安定した政権運営は難しいとの見方が支配的だ。