中国の国家情報法 在外公館の情報管理に懸念

外務省
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諜報活動への協力を義務付けた中国の国家情報法が、在外公館の情報保全に悪影響を及ぼしかねないと懸念が強まっている。外務省は中国の在外公館で現地の職員を雇っているが、その職員が中国の国内法を優先して情報漏洩(ろうえい)を招く可能性があるからだ。現地職員が日本と中国の間で板挟みとなり、相互不信を招く要因にもなりつつある。

「中国で採用している中国人職員に秘密保持義務を課しているか否かの質問にも答えないのはおかしい」

4月2日の衆院外務委員会で、国民民主党の山尾志桜里氏は政府にこう詰め寄った。山尾氏が在中国日本大使館などの情報管理を繰り返しただしたのは、国家情報法では組織や個人に「工作活動への協力義務」が課されているからだ。

同法は2017年に施行されたが、どのように運用されているか、実態は明らかになっていない。中国のサイバー攻撃などに詳しい専門家によると、中国当局から協力要請を受けた中国人が、退官した自衛官の行動をインターネット上で監視していたとみられる事例があったという。

現在、中国には北京の日本大使館など合計8つの在外公館があり、現地職員の定員は合計282人。このうち110人が領事班に所属し、査証(ビザ)発給に関連するデータ入力や資料作成、窓口対応を主な業務としている。

加藤勝信官房長官は5月21日の記者会見で、現地職員に関し「職務上知り得たことを漏らすこと、許可なく持ち出すことを禁止行為と定めている。禁止行為を行った場合には処分を行う」と述べた。ただ、現地職員が国家情報法に基づき協力を求められた場合、中国の国内法に従う可能性は否定できない。この点について、外務省在外公館課は「答えは差し控える」と述べるにとどめている。

中国独特の職員採用形態も、不審を招く要因となっている。各国の在外公館やメディアなどが中国で現地職員を採用する際、人材派遣や管理を行う中国外交部傘下の国営企業を通じて契約する義務がある。この企業を通じて採用した人物には情報機関の関係者が紛れ込むリスクがある。

昨年12月には、豪紙が上海にある各国の領事館や海外企業に多数の中国共産党員が勤務していると報じた。外務省関係者は「思想・信条に関わるので、採用段階で『中国共産党員か』と聞くことは難しい」と語る。職員の身辺調査に万全が期されているか、明確な説明がなされていないのが実態だ。(千田恒弥)