立民・枝野代表、内閣不信任案めぐり発言迷走

会見で記者団の質問に答える立憲民主党・枝野幸男代表=31日午後、国会内(春名中撮影)
会見で記者団の質問に答える立憲民主党・枝野幸男代表=31日午後、国会内(春名中撮影)

菅義偉(すが・よしひで)内閣に対する不信任決議案をめぐり、立憲民主党の枝野幸男代表の発言が迷走している。提出を検討しながらも、「新型コロナウイルス感染拡大の最中に政治空白を作るのか」という批判を懸念し、表向きは消極的な態度をとってきた。6月16日の会期末が近づき、今度は提出を示唆する方向へ軌道修正を図っている。

衆院解散か内閣総辞職を求める内閣不信任案は、野党にとって最大の対決カードだ。枝野氏は31日の記者会見で、提出を判断する上で緊急事態宣言発令中か否かが「大きな要素」としつつ、衆院議員の任期満了を迎える10月になっても感染状況が改善しない可能性があると指摘した。

その上で、「早く選挙をやり、しっかりした体制(枝野内閣)を作ったほうが感染抑制のためにもいいという要素が強まっている」とし、慎重な言い回しで宣言下の今国会での提出を示唆した。

コロナ対応の失敗を理由に不信任案を提出したいが、「提出したい」といえば批判される。枝野氏のジレンマが象徴的に表れたのが4月2日の記者会見だった。「(選挙を経ずに)少数与党だが、私の下の内閣で当面の危機管理を行わせていただくべきだ」。解散を要求できないいらだちから、「禅譲論」という非現実的な主張も飛び出した。

「現状で衆院解散できない。提出したら解散すると(与党幹部らが)明言しているので提出できない」。5月10日にはこう語り、党内外に「今国会で出すつもりがない」と誤解を生んだ。すると19日、「宣言解除が一つの目安になる」と釈明。当時、宣言は5月末までとされており、6月の提出を視野に入れた発言だったが、その後、宣言が会期末より先の6月20日まで延長された。世論の批判を懸念するあまり自縄自縛になった末の「失敗」(立民幹部)といえる。

そして31日には、秋まで感染が収まらなさそうだから現在の宣言中に衆院選を実施しても構わないという論法で、会期内提出の可能性を示した。

それでも、提出すれば「政治空白を生んでいいのか」と与党に批判されるのは目に見えている。「多少の政治空白を生んだとしても、菅政権が続くよりは国民のためになる」と言い切って提出できないなら、現在の党勢では政権交代はできないと自ら認めることになりかねない。(田中一世)

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