《メディアでの人気の裏返しに周囲から聞こえてきたのは「亞門は演出家ではなく、テレビタレント」の陰口》
テレビのバラエティー番組に出たり、各界の著名人が出ていたインスタントコーヒーのCM出演が決まったりで、またたく間に「全国区」になったのですが、演劇界の人たちからは、「亞門は結局、テレビなどに出たかっただけ、顔を売りたかったんだ」といったイヤミが聞こえてくる。つまり、宮本亞門は演出家ではなくて「テレビタレント」という評価です。
さらには、口では演劇、演劇と言ってはいるけれど、「まじめにやっていない男」「イメージの面白さだけ」。ミュージカル、オペラ、お芝居…と平気で違うジャンルのことをやるのも「散漫だ」「何がやりたいのか分からない」なんて、言われ続けました。もうガックリでしたね。
《地に足がついていないような不安感がつきまとう。そして「同じようなもの」ばかり求められることへの抵抗感は次第に強まっていった》
僕がそれまでやってきたことは、米ブロードウェーの〝日本版〟じゃないのか? 例えば、ニューヨークやロンドンで現地の人に「僕は『サウンド・オブ・ミュージック』をやりました」と言ったところで、相手の反応は「あぁ、そう」だけ。会話は進みません。はっきり言って〝遠い目線〟です。僕にとっては決してコピーじゃないのだけれど、そうは見てくれません。「この人はコピーする演出家なんだ」ってね。