勇者の物語

後期優勝阪急ナイン奮起 「近鉄王国」を阻止 虎番疾風録番外編237

阪急・加藤(10)が同点3ランを放ち生還、大喜びのナインに迎えられる
阪急・加藤(10)が同点3ランを放ち生還、大喜びのナインに迎えられる

■勇者の物語(236)

後期の「勇者」の戦いぶりを評論家の岡本伊三美はこう表現した。

「阪急はよくいえば賢く、悪く言えばずるい選手がそろっている。上田監督の時代も『選手が試合だけでなくペナントレースの展開自体を先読みしてしまう』とよくこぼしていた。だが、それは逆に〝大局〟を見る目がすぐれた選手が多いという証明。後期、梶本監督が何も言わなくとも阪急は奮起した」

その通り、後期序盤から飛ばした。7月を9勝3敗1分けで抜け出すと、8月13勝9敗1分け、9月12勝9敗2分け―と着実に貯金を増やしていく。チームを引っ張ったのはエース山田だ。

「もし、近鉄が前後期を制覇したら、その影響はけっしてこの1年にとどまらない。〝近鉄王国〟の到来であり、阪急の没落につながる。そんなことはオレがさせない」

後期だけでなんと13勝1敗1S。通算21勝5敗4Sで最多勝利と最高勝率・808の2つのタイトルを獲得。そして10月5日、優勝マジック「1」で南海戦を迎えた。

◇10月5日 西京極球場

南海 000 211 020=6

阪急 110 001 003=6

(本)定岡⑪(白石)王天上(23)(白石)  伊藤⑩(永本)加藤英(35)(森口)

3点差を追う九回、阪急は先頭の代打高井の投手強襲安打と福本の左前安打で無死一、二塁。簑田、島谷が倒れ2死となったが、加藤英が1―1後の3球目を左翼へ35号同点3ラン。いや、後期Vを決める〝優勝ホームラン〟を叩き込んだ。

スタンドからファンがなだれ込んでくる。五色のテープが飛び交い紙吹雪が舞う中、ファンをかき分けて加藤英がホームを踏む。

「最高や。こんなこともあるんや。優勝やろ。三冠王やろ」

残念ながら「本塁打王」にはならなかったが、打率・364、104打点で「首位打者」と「打点王」を獲得。最多安打(163)のタイトルも合わせれば堂々の〝三冠王〟だ。

そして梶本監督が夜空に舞った。

「初めての体験なので、あぁ、なんと言いますか…」と言葉も舞い上がった。

パの覇者を決するプレーオフは8日後の13日に開幕する。(敬称略)

■勇者の物語(238)

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