話の肖像画

メディアの寵児になったが… 演出家・宮本亞門⑭

僕自身もテレビなどに出演して、いろんな方と会って、おしゃべりをするのは楽しかった。

だから、バラエティー番組に出たり、司会をやったりもしていたのですが、そのうちに、人気先行というか、地に足がついていない、というべきか…。何となく違和感を覚えるようになったのです。

僕としては、いろんな舞台に挑戦してみたかったし、毎回、ジャンルや内容を変えたかったのだけど、どうしても周りは『アイ・ガット・マーマン』と同じようなものを期待する。「余計なことは考えず、前のスタイルを継承してやってくれ」というわけです。だんだんとそれが苦しくなり、3、4年後には(『アイ・ガット・マーマン』が)重荷になっていた。僕にはこれしかないのか、もう見たくないって。


《葛藤は続く。ショッキングな言葉を公演のプロデューサーから投げつけられたのは数年後のこと。チケットの売れ行きが芳しくなくて「稽古場はもういいですから、(テレビに出て)その顔で、もっと(チケットを)売ってくださいよ」と言われたのだ》


悪気はなかったのでしょう。だけど、僕にとっては大ショック。結局、「演出家だと思われていなかったんだ」「結局は〝人寄せパンダ〟じゃないか」と思い知らされました。(聞き手 喜多由浩)

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