日曜に書く

論説委員・中本哲也 「巴戦の数学」を復習した

大相撲夏場所千秋楽で優勝を決め、賜杯を手に笑顔を見せる照ノ富士=23日、両国国技館(代表撮影)
大相撲夏場所千秋楽で優勝を決め、賜杯を手に笑顔を見せる照ノ富士=23日、両国国技館(代表撮影)

優勝決定戦

大相撲夏場所は、大関同士の決定戦を制した照ノ富士の優勝(2場所連続4度目)で幕を閉じた。両ひざの故障などで一時は序二段まで番付を落とした照ノ富士は、7月場所で横綱昇進を目指す。

決定戦で敗れた貴景勝も「優勝に準ずる」成績である。綱取りの資格はあるはずだ。稀勢の里(現荒磯親方)は12勝3敗で優勝次点(優勝力士とは星2つ差)の翌場所に初優勝し、横綱昇進を決めた。

7月場所は、2大関が横綱昇進をかけ、横綱白鵬は進退をかけて臨むことになる。

ところで、夏場所の優勝争いは3人の力士による「巴(ともえ)戦」になる可能性があった。

千秋楽結び前の一番で遠藤が敗れて実現しなかったが、遠藤は本割で両大関に勝っているだけに、巴戦も見たかった、という思いがある。

等比数列の和

巴戦は3人の力士の星が並んだときに行われる決定戦で、最初に2人が対戦し、勝った力士は控え力士と戦って、誰かが連勝するまで続ける。

巴戦に関して「最初に控えになる力士が他の2人よりも不利になる」という通説がある。

この通説について、自分なりに考察したことがある。久しぶりに復習してみた。

A、B、Cの3力士による巴戦で、最初にAとBが対戦するときCの優勝確率を考える。

〇を勝ち、●を負け、△を控えで決着しない場合とする。

Cの優勝パターンは【〇〇】【〇●△〇〇】【〇●△〇●△〇〇】【〇●△〇●△〇●△〇〇】…延々と続く。

通説は、〇●△の確率をすべて2分の1とした。この場合のCの優勝確率は【4分の1】+【32分の1】+【256分の1】+【2048分の1】+…と続く。初項が4分の1、公比が8分の1の「等比数列の和」である。

公式を使わずに(その方が楽しい)値を求めてみよう。Cの優勝確率をXとし8倍する。

8X=【2】+【4分の1】+【32分の1】+【256分の1】+…。2項目から先は元のXに等しくなる。よって、

8X=2+X

X=7分の2

Cの優勝確率は3分の1より小さい。Cの力士だけは、初戦で負けるとその時点で巴戦が決着してしまうためだ。