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シンガー・ソングライター 丸山圭子 胸に響く大人の恋愛小説『30年目の待ち合わせ』

シンガー・ソングライターの丸山圭子
シンガー・ソングライターの丸山圭子

『30年目の待ち合わせ』エリエット・アベカシス著、齊藤可津子訳(早川書房・2310円)


1980年代末、パリのカルティエラタンで出会った、ともに20歳の大学生アメリとヴァンサンはたちまち恋に落ちる。だが、次の待ち合わせの日、2人はすれ違い、再会まで10年を要する。

アメリは、地方の封建的な家庭で育った内向的な女性。夢想家で、小説の世界に現実逃避し、フランス語教師と書店経営の仕事についた。ヴァンサンは真面目な性格で親に逆らえず、好きな音楽の道を断念して金融とコンサルタントの仕事を選ぶ。

互いに社会通念にとらわれ、自分自身を縛っている。いざ再会すると、相手を「無意識のうちに肌で感じおののいていた」が、すでに結婚し、父親になっていたヴァンサンにアメリは失望する。

その後、ヴァンサンは仕事の成功とは裏腹に、常に満たされない思いを抱え、アメリは運命の人との出会いを求め続け、35歳で結婚するが…。思い込みの強さ、価値観の相違、すれ違いからその後の人生が予想しない方向に進むのは、世の常かもしれない。

30年のときを経て2人は己の人生に決着をつけ、魂の求めるものに再び向き合う。「圧倒的な幸福感がわきあがり、生まれて初めて生きていると実感した」

運命のいたずらに翻弄されながら「愛とは何か」を追求する大人のラブストーリー。恋人たちを見守り続けるパリの街が美しい。

「愛がなにものにもまさると信じているのはフランス人くらいなもの」

「人生におけるあやまちの半分は行動の欠如、半分は性急さによる」

「運命とは人生の分岐点でどちらかにころばせるふとした気まぐれ」

世界的ベストセラー作家で哲学者でもある著者の言葉が胸に響く。

『30年目の待ち合わせ』
『30年目の待ち合わせ』

『麒麟の翼』東野圭吾著(講談社文庫・814円)


子供の頃から推理小説のファン。とくに東野圭吾作品は片っ端から読みあさっている。なかでも本書は人情味あふれる加賀恭一郎シリーズの最高傑作。

東京・日本橋の橋の上で胸を刺された男の遺体が発見された。犯人と断定された男は昏睡(こんすい)状態に…。事件の裏に隠された家族愛など繊細な人間の心模様が読み取れ、推理だけでない感動がある。

『麒麟の翼』
『麒麟の翼』

まるやま・けいこ 埼玉県出身。昭和51年、「どうぞこのまま」が大ヒット。アルバム「レトロモダン~誘い」を中心にライブ活動中。著書に『丸山圭子の作詞作曲・自由自在』。洗足学園音大客員教授。