話の肖像画

演出家・宮本亞門(63)(12)友人の苦言、その先に見えた光

すると女性の友人は「アナタ、随分エラくなったものね。文句ばっかりじゃない。まだ何もつくっていない人間を誰が認めてくれる? ぶつぶつ言う前に自分でつくりなさいよ!」。そう言って電話をガチャンと切られました。

ムッとしたけれど、確かにその通りかもしれない、と改めて考え直してみたのです。そうだ、おカネも全部、自分で集めて、小さいところでもいいから会場を探し、出演交渉も宣伝もやることができないか? 「翻訳もの」ではなくて、オリジナルのストーリーを考え、もちろん演出も振り付けも僕が担当する…。そうして考えたのは、アメリカの伝説のミュージカル歌手の生涯を描いた内容だった。


《演出家としてのデビュー作となった『アイ・ガット・マーマン』。アメリカの伝説の女性ミュージカル歌手、エセル・マーマンの生涯がモチーフ》


たくさんの名曲をヒットさせ、〝ミュージカルの女王〟と呼ばれたエセル・マーマンにはずっとひかれていた。どうしてもショービジネスの世界で成功したいと、本気で生きた女性。家族を失ってもなお歌い続けた人…。その姿にどこかで、おふくろの面影を重ねていたのかもしれません。(聞き手 喜多由浩)

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