地方変動 第2部⑤

阿波おどり、世界へ ライブ配信で魅力を拡散

新型コロナウイルス禍で祭りに代表される地方の「伝統」が消滅の危機にある。感染を防ぐため大勢の人を集められないからで、地方の社会や経済の衰退につながることも懸念される。伝統の灯を絶やさない手段として模索され始めたのが「デジタルとの融合」だ。

「あいよっ、あいよっ」。時折入る印象的な合いの手。スタジオに組まれた櫓(やぐら)に登った歌い手「音頭取り」の歌声と和太鼓、三味線に合わせ、浴衣や法被に身を包んだ男女5人が、両手を頭上で揺らし、ステップを踏んで踊り歩く-。

昨年8月15日、動画でライブ配信された大阪府南西部・泉州地域の盆踊り「泉州音頭」の情景だ。時間は約25分間、踊ったのは泉州音頭を継承してきた「宝龍会」(事務局・大阪府貝塚市)。感染予防のためオンライン中継を取り入れた祭りの新形態だ。

「関東や東北の視聴者に届き応援のコメントや寄付までもらえた」。メンバーの上林修さん(55)は振り返る。

昨年はコロナで練習に集まれず、毎年約20会場で出演していた祭りは全て中止となった。思いついたのはインターネットの活用。互いの自宅をビデオ会議システムでつなげて練習し、様子をツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で発信した。「SNSを通じていろいろな人からアドバイスをもらった。演奏や動画の質が上がった」。上林さんは笑顔をみせた。

世界への扉開く

ライブ配信は、祭りの企画や運営を支援する東京の企業「オマツリジャパン」が手掛けた。コロナで中止された各地の祭りの踊りをライブ配信する「おうちでお祭り騒ぎ!オンライン夏祭り2020」を開き、宝龍会にも参加を呼びかけた。掲げたのは「祭り文化存続に向けた第一歩」だ。

東京都内や各地のスタジオをオンラインでつなぎ、宝龍会を含む8団体が阿波おどり(徳島県)などを披露した。今もウェブ上にある動画は一定の人気を博し、視聴された回数は1万7千を超える。地域と切り離せない祭りは、それゆえ地域社会に閉じがちだったが、オンラインによって世界に開かれるという思わぬ結果を生み出したのだ。

「祭りとデジタルの融合」はほかでも広がり始めている。例年25万人が訪れる岐阜県関市の「刃物まつり」は昨年10月、初めてオンラインで開催。「包丁を砥石(といし)の上に乗せます。角度は十円玉3枚分、15度くらい」。ウェブ上でベテラン研師(とぎし)が「包丁研ぎ講座」を提供した。

リアルに勝てるか

オンラインを活用し始めたのは祭りだけでない。今年の成人式は市長のあいさつや新成人の誓いを動画配信するケースが相次いだ。

地場の名産や伝統食をオンラインで体験できる取り組みも。約150年のワイン生産の歴史を持つ山梨県では昨年秋、現地の醸造所をめぐるイベントが相次ぎ中止。代わりに、県ワイン酒造協同組合が26の地元ワイナリーによるオンラインのイベントを開いた。