勇者の物語

千載一遇の好機逃さず奪首成功 虎番疾風録番外編235

西武に3連続完投勝利をあげた三浦
西武に3連続完投勝利をあげた三浦

■勇者の物語(234)

主砲マニエルの長期欠場。エース鈴木の1軍登録抹消―こんな千載一遇のチャンスを阪急が見逃すわけがなかった。

「ウチの連中は緊張感、プレッシャーがかかるようになってくると絶対に強い。ボクがどうこう言うより、選手がすべて知っている」

梶本監督が大号令を飛ばすまでもなかった。マニエルが倒れた6月9日以降、23日まで近鉄が3勝7敗1分けともがき苦しんでいるのを横目に阪急は10勝1敗1分け。5ゲーム差をアッという間にひっくり返した。

◇6月23日 西武球場

阪急 004 000 100=5

西武 000 001 000=1

(勝)三浦6勝4敗 (敗)東尾4勝10敗

(本)井上修⑧(五月女)

ここまで8連勝の阪急は高卒2年目の三浦が先発。三回、阪急打線が西武の先発・東尾に襲いかかった。中沢、井上修の連打で無死二、三塁とし福本の三遊間ヒットでまず1点。さらに1死後、島谷の右翼線二塁打、マルカーノの左前タイムリーなど〝9人攻撃〟でKO。若い三浦に援護射撃だ。

九回2死三塁、打者田淵に対しマウンドの三浦は必死に笑顔を作っていた。

「どんなに苦しくとも絶対に顔に出すな。少しでも見せればつけ込まれる。それがプロの世界や」

これが阪急に入団して最初に教えられた教訓。131球目、三浦のカーブに田淵のバットが空を切った。西武からオール完投の3連勝。チームも破竹の9連勝で近鉄に「0・5」差をつけて単独首位に躍り出た。

「阪急奪首」。近鉄の西本監督は南海戦が雨で流れた藤井寺球場で聞いた。

「ふーん、そうか。ウチはここしばらくイヤーなムードが続いとったし、1日休ませてもろた方がええ。気分転換もできる。昼間の試合や旅行日なしの試合が続いとったからなぁ」

珍しく弱気な発言? すかさず「別に泣きごと言うとるわけやないで」とピシャリ。

「阪急も残り4つ全部勝つのは難しいやろ。けど、よその負けを当てにはできん。阪急は阪急。ウチの残された道は南海との3試合に勝つことだけや」

西本監督の目がまた輝き始めた。(敬称略)

■勇者の物語(236)

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