パラ選手用の治療用覚醒剤に立民が突然の「待った」

夏の東京五輪・パラリンピックをめぐり、海外選手による治療用覚醒剤の国内持ち込みを認める特別措置法改正に向けた与野党の足並みが乱れている。持ち込みを認めないことで国際社会からの批判を危惧する自民党に対し、立憲民主党は「覚醒剤取り締まり強化の流れに逆行する」などと主張しているからだ。自民は五輪開催に慎重な立民の意向が反映されたと見ており、「全会一致」での改正見送りも視野に入れる。

「悩ましい問題との認識はお互いに共有している」。自民の森山裕国対委員長は26日、立民の安住淳国対委員長との会談後、国会内で記者団にこう語り、治療用覚醒剤についての与野党間の調整が難航していることを示唆した。

会談に臨む自民党・森山裕国対委員長(左)と立憲民主党・安住淳国対委員長=26日午前、国会内(春名中撮影)
会談に臨む自民党・森山裕国対委員長(左)と立憲民主党・安住淳国対委員長=26日午前、国会内(春名中撮影)

自民が目指すのは、本来は覚醒剤取締法で規制され、国内への持ち込みなどが禁じられている治療用覚醒剤「アデラール」の時限的な解禁だ。アデラールは注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬として知られ、2016年のリオデジャネイロ五輪などでも持ち込みが許可された。東京五輪・パラリンピックに参加予定の選手10~15人もアデラールを使用しており、国際オリンピック委員会(IOC)が今年3月に大会組織委員会に対応を求めていた。

これを受け、与野党は議員立法での改正に向けて4月下旬から協議を始めたが、早期の法改正を目指す自民、公明党、日本維新の会に対し、立民や国民民主党は慎重な姿勢を示している。立民議員は産経新聞の取材に「薬物の取り締まりを強化しようという時代の流れに逆行している。青少年に誤ったメッセージを送ってしまう」などと説明。26日も大会組織委副会長を務める遠藤利明元五輪相を含む与野党議員が国会内で会合を開いたが、結論は出なかった。

新型コロナウイルス禍の五輪をめぐり、立民は「国民の命を最優先にできなければ延期か、中止せざるを得ない」(枝野幸男代表)と慎重論を展開している。このため、与党には立民の姿勢について「政局的なにおいがする」(自民ベテラン)との声がある。

法整備が進まなければ、アデラールを使用する選手の参加は困難になるため、与党内では「このままでは人権問題になりかねない」(閣僚経験者)との危機感が強まっている。自民幹部は「立民などが反対するならば仕方がない」と述べ、会期末が迫る中、立民などの説得は諦めて賛同する政党だけで改正案を提出し、早期に審議入りさせる考えを示した。(永原慎吾、田中一世)

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