飾りじゃないのよ「祇園パセリ」 食卓の主役をつかめ - 産経ニュース

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飾りじゃないのよ「祇園パセリ」 食卓の主役をつかめ

祇園パセリの畑で「広島のお宝野菜」と話す木下登さん=広島市安佐南区
祇園パセリの畑で「広島のお宝野菜」と話す木下登さん=広島市安佐南区

料理の彩りとして添えられることの多いパセリ。栄養価が高いのに、脇役イメージからか、お皿に残されてしまったり、使いきれずに余ってしまったりすることも少なくない。だが、広島の伝統野菜「祇園パセリ」は、苦みが少なく食べやすいという。地元では天ぷらなどとして親しまれてきた主役級の素材だが、知名度はいまひとつ。何とかブランド化を進めようと、生産者たちが、PRやレシピ開発に本腰を入れている。

祇園パセリの特徴は細かく縮れた葉型で食感がやわらかく苦みが少ない=広島市安佐南区
祇園パセリの特徴は細かく縮れた葉型で食感がやわらかく苦みが少ない=広島市安佐南区
珍しいパセリ

祇園パセリが栽培されているのは、広島市安佐南区祇園地区。一般のパセリより葉が薄くてやわらかく、形は細やかな縮れが特徴で、苦みが少なくて食べやすい。地区では「おふくろの味」に欠かせない一品だという。

県がまとめた資料によると、もともとは広島市西区の観音地区や庚午(こうご)地区などで小規模に栽培されていたが終戦後、昭和25年頃から祇園地区でも栽培されるようになった。

生産者たちはとりわけ、採種にこだわってきた。細かな作業で重労働だが、市販の種に頼らず、優良のパセリを選別しながら、それを自家採種し、各農家で継承してきたのだ。

生産者の一人、小路(しょうじ)律子さんは「細かな手入れや収穫も中腰姿勢で重労働。けれど、地域で守ってきた特産品であり、手間をかけた分だけ、とてもおいしい」と胸を張る。

祇園パセリを使った「パセリ餃子」(広島文化学園短大・江坂美佐子准教授提供)
祇園パセリを使った「パセリ餃子」(広島文化学園短大・江坂美佐子准教授提供)
知名度なし、後継者なし

ただ、知名度は広島市内ですら低い。広島市安佐南区の広島文化学園短大の学生らが平成21年にまとめたアンケート調査では、祇園パセリを「知っている」「食べたことがある」と答えた人は3%にも満たなかった。

アンケートの対象者は、学生や大学祭を訪れた人265人。パセリを「嫌い」または「どちらかといえば嫌い」と回答した人も全体の約6割にのぼった。

また、生産者の木下登さん(72)によると、ピーク時で祇園地区に約80戸あった生産農家は現在は28戸にまで減少。生産者の高年齢化も進む。

後継者不足は切実で、一度就職などで実家を離れた住民が、定年退職後にUターンするなどして、かろうじて引き継いできた。木下さんもその一人で「どこも後継者がいない。定年退職後に継いでくれればいいが、そのときでないと分からない」と話す。

ブランド化にチャレンジ

現状を打開しようと、木下さんは生産者団体「広島市農業振興協議会祇園町農事研究会パセリ部会」の会長に就任すると、祇園パセリのブランド化に乗り出した。

そもそも「パセリなのに苦みが少ない」という特徴があるのに、長年にわたって市場では単なる「パセリ」として販売されていた。差別化をしなくてはならない。

まず「他とは違うことを伝えよう」と28年には「祇園パセリ」の名入り包装袋を登場させた。

ただ、包装袋に入れるのは手間もコストもかかることから、当初はほかの生産者から「大変だ」と苦情もあったという。

それでも、木下さんは「袋に入れたほうが清潔感もある」と説得を重ねて理解を求め、買い求めやすいよう1束50グラムから25グラムにする工夫もした。

30年には魅力ある県産の農林水産物などを登録する「広島県産応援登録制度」に認定。これにより「こだわりの広島の幸」を名乗ったり、販路拡大の支援を受けられたりするようになった。

さらには、今春には特許庁の「地域団体商標」への登録も認められた。地域ブランド保護のための制度で、ブランド力を強め、国内外へのアピールが期待できるという。

祇園パセリを使った「パセリシュークリーム」(広島文化学園短大・江坂美佐子准教授提供)
祇園パセリを使った「パセリシュークリーム」(広島文化学園短大・江坂美佐子准教授提供)
絶品メニューも

心強いサポーターも登場した。4月には広島文化学園短大の江坂美佐子准教授(47)が「おいしさをもっと広めたい」と、食物栄養学科の学生たちが開発したメニュー約50種からよりすぐり10種をまとめた冊子「祇園パセリのおいしいレシピ」(A5判)を1500部作った。

例えば「パセリたっぷり餃子」はニラの代わりにパセリを使用。パセリの香りが食欲をそそる。また、「パセリのごまあえ」は細かな縮れた葉にごまのあえ衣がよく絡んでパセリが主役の逸品だ。スイーツもいい。「パセリのシュークリーム」は生地やクリームにもパセリを練りこみ、豊かな風味とクリームの甘さが絶妙だ。

江坂准教授は「第2弾、第3弾とレシピ集をつくっていけたら」と話す。

ご当地野菜としての存在感を徐々に高める祇園パセリ。住民たちの地域愛の象徴になっているといい、木下さんは「祇園のお宝野菜なんです」と話していた。 (嶋田知加子)