勇者の物語

2強4弱勢い乗った梶本阪急 虎番疾風録番外編232

下馬評を覆し開幕6連勝。笑顔の梶本監督
下馬評を覆し開幕6連勝。笑顔の梶本監督

■勇者の物語(231)

エース山田の完封で開幕戦を勝利した阪急は勢いに乗り6連勝。見事なスタートダッシュを決めた。さすが、前年のパ・リーグ覇者―。だが、開幕前の下馬評で「梶本阪急」の評価は最悪だった。

2月の高知キャンプを2年連続で訪れたサンケイスポーツの評論家・牧野茂はそのムードの違いに驚いた。

「昨年の阪急のキャンプはグラウンドに漂う緊張感、練習の合理化、機械設備、裏方さんの協力―どれをみても日本一だった。だが、ことしは危険なものを感じた」

あちこちから白い歯がこぼれ、雑談や私語が牧野の耳に届いた。権威者が去った後の合議制。プレーの一つ一つをコーチが話し合いながら指導していた。そこに「阪急の危険がある」と牧野は指摘した。

「力のあるリーダーが去ったあとは得てして、管理に統一性が欠け、同時に自分たちの目標までぼやけてしまう。川上の後を継いだ昭和50年の長嶋巨人がそうだった。コーチと選手の間に妥協が生じ、選手たちに自分勝手な個人プレーが生まれてくる。今季の阪急はよほどこの点を頭に置いておかないと失敗する」

V9巨人時代の名参謀の言葉には説得力があった。

梶本阪急は苦しんだ。オープン戦17試合で4勝12敗1分け―の最下位。本当に梶本監督で大丈夫なのか…。そんな声を抑えたのが13勝5敗1分けの首位で終わった近鉄の西本監督だった。

「阪急を見くびったらアカン。勝負は開幕から―とわかっとる選手ばっかりや。それより〝首位や〟〝強い〟と言われるウチの方が心配や。心の底に油断が生まれるのが一番の敵。開幕したら阪急は変わる。ウチはそれ以上のガッツでねじ伏せなアカン」

近鉄は阪急以上の成績でスタートダッシュを決めた。4月26日の時点で近鉄が10勝3敗1分けの「首位」。阪急も9勝3敗2分けで0・5差の2位と、早くも「2強」が飛び出した。そして、27日からの阪急―近鉄4連戦、初の〝師弟対決〟を迎えたのである。

「五分で切り抜ければ結構」と慎重な梶本監督。一方、西本監督は「そんな計算なんかしとらんわ。全部勝ちにいくんや!」と大号令。はたして、結果はいかに―。(敬称略)

■勇者の物語(233)

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