米から独立か、中国包囲網取り込みか 対北めぐり米韓首脳に温度差

21日、米ホワイトハウスで会談する韓国の文在寅大統領(右端)とバイデン米大統領(左端)(聯合=共同)
21日、米ホワイトハウスで会談する韓国の文在寅大統領(右端)とバイデン米大統領(左端)(聯合=共同)

【ソウル=桜井紀雄】バイデン米大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は21日の首脳会談で、朝鮮半島の完全な非核化に向けた共同歩調を確認した。だが、米国に束縛されない自主的な南北対話や安全保障政策を望む文政権に対し、バイデン政権は、対中国包囲網への韓国取り込みもにらんでおり、思惑の違いがうかがえた。

「非核化の時間表について韓米間に考えの差はない」。文氏は首脳会談後の共同記者会見で、現実的アプローチで北朝鮮問題の外交的解決を目指すバイデン政権の新たな対北政策を歓迎した上でこう強調した。

共同声明でも、北朝鮮が拒否感を示してきた「北朝鮮の非核化」ではなく、南北双方を含む「朝鮮半島の非核化」という表現が用いられ、トランプ前大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の合意などの「継承」も確認された。いずれも文政権がこだわってきた条件をバイデン政権がのんだ形だ。

だが、任期1年を切った文氏と対北政策に着手したばかりのバイデン氏では、現実的な「時間表」の差は大きい。バイデン氏は「北朝鮮が緊張緩和に向けた積極的な措置を取らない限り金氏とは会わない」と改めて述べるなど、交渉を急がない姿勢を示した。文氏は南北主体の協力策を模索してきたが、米主導の制裁に阻まれ進展せず、北朝鮮は対話自体を拒んでいる。

米韓の思惑のズレを取り繕ったのが、今回、合意した韓国のミサイル能力を制限する指針の撤廃だ。韓国が米国のミサイル技術を導入する条件として1979年に射程や弾頭重量の制限が設けられた。徐々に緩和されてきたが、射程800キロの制限が残っていた。韓国内では、指針撤廃について米国の〝足かせ〟から脱する「自主国防」の重要な一歩と歓迎する見方が多い。

だが、対北防衛なら射程800キロで十分であり、指針撤廃で中国やロシアまで射程に収めることが可能となる。「米国にとって中国を牽制(けんせい)する効果が得られる」と韓国メディアは伝えており、バイデン政権は、文政権をさらに一歩、対中包囲網に誘い入れた形だ。