寺社、仏像、茶道…。僕が好きだと思うものはどうやら他の人とは違う。別の感性を持ってしまったらしい。そこでまた悩んでしまう。そんなストレスもあったのか、急激に太りはじめ、突き出たおなかで自分のつま先が見えなくなったほど。ウエストは1メートル以上だったでしょう。
《10代半ばのころ、睡眠薬を飲んで、自殺を図ったことがある。薬局で薬を買い求め、その夜、覚悟を決めて飲み込んだのだが…》
両親に宛てて「先立つ不孝を…」と書いた遺書まで用意しました。もちろん僕は、本気で死ぬつもりだったのです。
ところが、翌朝、いやにスッキリした気分で目が覚めるではありませんか。後で分かったのですが、どうやら若過ぎる僕の姿を不審に思った薬局の人が、「睡眠薬」ではなくて、「ビタミン剤」のようなものを渡してくれたらしい。
今から振り返ると、いったい何だったんだろうと思いますが、思い込みというか、一方的な考えで頭が凝り固まっていたのでしょうね。「もう死ぬしかない」って…。後からつくづく思ったのは「あぁ、死ななくてよかった」。(聞き手 喜多由浩)