勇者の物語

掛布・山田・江川 それぞれのスタート 虎番疾風録番外編231

スポーツ各紙の1面を飾った阪神・掛布の1号本塁打(右はブレイザー監督)
スポーツ各紙の1面を飾った阪神・掛布の1号本塁打(右はブレイザー監督)

■勇者の物語(230)

4月7日、昭和54年シーズンの幕が開いた。「江川騒動」のおかげで飛躍的に部数を伸ばしたスポーツ新聞。翌日の紙面を見てみよう。1面を飾ったのは広島との開幕戦で第1号本塁打を放った猛虎の新主砲・掛布の写真だ。

4―1で迎えた七回、このときすでに阪神は10安打を放ち、先発野手でヒットが出てなかったのは掛布だけ。「お前だけやぞ!」の声を背に打席に入った掛布は広島の4番手、左腕大野の初球をとらえた。打球は左翼席へライナーで飛び込んだ。三塁コーチスボックスでブレイザー新監督が大喜びで新主砲を迎える。その写真である。

2面は『エース完封共演』。近鉄の鈴木が西武打線を8安打無失点に封じ込めれば、阪急のエース山田も南海を6安打散発に抑え完封勝利。5年連続開幕戦勝利は日本新記録となった。

◇4月7日 西宮球場

南海 000 000 000=0

阪急 003 010 11×=6

(勝)山田1勝 (敗)藤田学1敗

(本)加藤英①(藤田学)

三回、マルカーノの三塁内野安打で1点を先制した阪急は続く加藤英が中越えに2ラン。エース山田を援護した。

「梶本監督に勝ってもらいたかった。初勝利だから…。日本新? うれしい。でも、すぐに江川に破られるんじゃないの」と山田は皮肉で締めた。

その江川もまた、東京・虎ノ門のホテルオークラ別館で〝晴れの日〟を迎えていた。待ちに待った巨人への入団発表。背番号「30」の真新しいユニホーム。正力オーナーから巨人の帽子をかぶせてもらった江川はいつになく緊張気味。

「きょうは顔が硬くなってます。これからはスマイルを心がけます」

会見を終えた江川は、後見人の船田中自民党副総裁に入団のあいさつを済ませた後、午後2時前、川崎市多摩区の合宿所に入寮。寮長から合宿所での「仕事と係」を伝えられた。

①巨人軍旗係(毎朝夕に昇降)

②電話係(大きな声で「はい、巨人軍合宿所です」と出る)

③送迎バスの清掃(6日に1回)

「はい。よろしくお願いします」と目を輝かせる江川23歳。

それぞれの〝開幕戦〟である。(敬称略)

■勇者の物語(232)

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