朝晴れエッセー

グリコのネオンサイン・5月21日

新型コロナウイルスの感染者数増加・緊急事態宣言のたびにテレビに映し出される風景、道頓堀のグリコのネオンサインを見ると思い出すことがある。

44年前、大学受験前日、大学が斡旋(あっせん)してくれた宿のちょうど窓の向かいにグリコのネオンサインが輝いていた。そこは相部屋で、明日の試験を待つ同じ境遇の受験生が私を含めて4人いた。

またキャンパスで会おうと儀礼言葉を交わしたことまでは覚えているが、彼らとはお互いに連絡先の交換もしなかった。地方から出てきた名も知らないライバルたちの合否や消息は今となっては知る由もない。

その後、私は運よく合格できてなんとか(留年もしたが)卒業もできた。

地元に戻って就職し、8年間のサラリーマン生活も経験した後、以来30年余り、自営業を続けている。その間には結婚し、3人の子供にも恵まれた。

順風満帆の人生のようだったが10年前、突然に妻が病魔に侵され先立ってしまった。途方に暮れた時期もあった。

その後は私自身も大病を患ったりしたものの、今は再婚して後半の人生を謳歌(おうか)している。まだ道半ばだが、一生にはいろいろなことがあると実感している。

人生の始まりのグリコのネオンサインは鮮明にまぶたに焼き付いている。道頓堀の宿に居合わせた彼らもその後、いろいろな出来事がありそれぞれの人生があったろう。

今はなんとか早くコロナ禍が去って、若い人たちや私たち年配者に平和な日常が戻ることを切に願っている。

片山悟 61 兵庫県淡路市