朝晴れエッセー

パッチワーク柄のこたつ布団・5月20日

昭和30年代に私たちは大阪市内の寝具店に勤めており、夫は布団の綿入れ、私は布団の生地を縫う修業をしておりました。

縁があって結婚し、2人の娘を授かった後、悲願であった寝具仕立の専門店を開業することができました。

高度経済成長期からバブル期と、今では考えられないほどの忙しさで、本当に充実した日々でした。その当時は長持ちの上に紅白の布で蝶々結びにした婚礼布団を月に何組も納めさせていただきました。

その頃の商店街はイベントも行われるほどにぎやかで、夫はゴルフ、私はカラオケとご近所付き合いも盛んでした。娘たちには「サラリーマンとなんか結婚したらあかん、商売人が一番や」と言ってきました。

時代は変わり、布団は綿から羽毛になり、にぎやかだった商店街も再開発で散り散りになりました。夫の体調が悪くなったこともあり、惜しまれつつ店は48年の幕を閉じました。

思い出の詰まった生地棚から花柄、格子柄、無地、反物を集め一枚一枚縫い合わせ、大きなパッチワーク柄のこたつ布団を縫い、夫に綿を入れてもらいました。

コロナ禍の今、昔を思い出して、「今まで何枚布団作ったやろ」「何百枚、いや何千枚やなあ」「まだお父さんの作った布団で寝ている人おるかな?」

私たちの傍らには、サラリーマンと結婚した娘たちがプレゼントしてくれた新しい家族、猫の「きなこ」がパッチワークの布団の上で気持ちよさそうに眠っていて、その姿を2人で目を細めながら眺めています。

野上比登美 76 大阪府和泉市