保守派異論、了承見送り LGBT法案、「差別」表記などに警戒感

合同会議で発言する性的指向・性自認に関する特命委員会の稲田朋美委員長=20日午前、東京・永田町の自民党本部(春名中撮影)
合同会議で発言する性的指向・性自認に関する特命委員会の稲田朋美委員長=20日午前、東京・永田町の自民党本部(春名中撮影)

自民党は20日、「性的指向・性自認に関する特命委員会」(委員長・稲田朋美前幹事長代行)などの合同会議を党本部で開いた。与野党の実務者で合意した同性愛者など性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案を審査したが、保守派を中心に異論が相次ぎ、了承は見送られた。稲田氏らは今国会での成立を目指し週明けにも再度会合を開く方針だが、党内手続きは難航しそうだ。

自民案が土台となった法案の要綱は14日の超党派「LGBTに関する課題を考える議員連盟」で合意に至った。LGBTへの理解増進に関する基本計画の策定といった政府の役割などが盛り込まれ、自民、立民、公明、共産、国民民主、維新、社民の各党が賛同した。

「多様性を認め、寛容な社会を作ることができるのは保守政党の自民党だけだ」。立民との間で要綱の内容を調整してきた稲田氏は合同会議でこう法案に理解を求めたが、出席者からは反対意見も出た。

問題視されたのは「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」とする法案の目的と基本理念だ。もともとの自民案は医学用語として使われる「性同一性」としていたが、公明や立民の要請でより概念の広い「性自認」に修正された。公明が「性自認」の表現を使ってきたことに加え、「性同一性」は「障害」として捉えられていることも踏まえた。

また「差別は許されない」の一文は立民への配慮で追加された。ただ、「許されない」との表現では、これを元に訴訟が乱発する可能性もあるとして、自民党内には「差別はあってはならない」などに改めるべきだとの声がある。

合同会議では心と身体の性が一致しないトランスジェンダーの課題も指摘された。山谷えり子元拉致問題担当相は「男性の身体で、心が女性だからといって女性の競技に参加してメダルを取ったり、そういう不条理なこともある」と記者団に語り、海外の事例を調査する必要性を訴えた。

保守派内には、個人の判断に委ねる色彩が濃い「性自認」という言葉への違和感もある。ある中堅議員は、トイレや更衣室の利用で混乱が生じると懸念を示し「LGBTへの配慮は必要だが、全てを認めなければ『差別』となると、訴訟が乱発する社会になりかねない」と警鐘を鳴らした。

保守派が警戒する背景には、民主党政権などで検討された人権擁護法案の苦い記憶もある。人権侵害の定義が曖昧で、恣意(しい)的な運用や「表現の自由」の規制などへの懸念が噴出して廃案となったが、自民ベテランは「LGBT法案も形を変えた人権擁護法案になりかねない。拙速な議論は避けるべきだ」と語った。(広池慶一)

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