カット野菜もシャキシャキ AIが仕切るスマート農業(1/2ページ) - 産経ニュース

メインコンテンツ

カット野菜もシャキシャキ AIが仕切るスマート農業

農地を走る自動運転トラクターとドローン(愛媛県西条市提供)
農地を走る自動運転トラクターとドローン(愛媛県西条市提供)

あらゆるモノが通信でつながるモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)、自動運転トラクターやドローンなど最新技術を取り入れた「スマート農業」が注目されている。高齢化による担い手不足が深刻なためで、労働時間の削減や収益性向上が見込まれるためだ。スマート農業の技術実証(2カ年)を行っている愛媛県西条市と愛媛大学がこのほど、初年の1年間の取り組みを報告するシンポジウムをオンラインで開催。労働力の低減のほか、野菜の鮮度保証期間を延ばすなどの効果も得られたことが報告された一方、農家からは機器を導入するコスト面を不安視する声もあがり、課題をのぞかせた。

全国179地区で実施

スマート農業の技術立証は農林水産技術会議(事務局・農林水産省)が令和元年度から、東京都を除く46道府県の179地区で行っている。西条市では令和2年度から、住友化学、西条産業情報支援センター、地元JAなどが出資して設立された「サンライズファーム西条」が「スマートフードチェーンによる野菜生産強靱(きょうじん)化の実証」として実施。野菜の栽培・貯蔵・加工のサポートを行うAIと、栽培や輸送、販売実績や消費者ニーズといったデータに基づいて生産計画を作成するAIを使い、トータル管理システムを構築して収益向上を図ることを目標に掲げている。

シンポジウムでは1年間取り組んだ成果などを報告した。

自動運転トラクターの導入で、オペレーターはトラクターを監視しながら近くで他の作業をできるようになった。畑の畝を立てたり肥料を与えたりするのも、機械の導入で労力が格段に低減された。とりわけレタスの栽培に自動くい打ち機を使うことで、栽培のためのビニールトンネルを取り付ける時間を短縮でき、バランスよく設置できるようになったことで強度も増すことができた。ドローンを使って農地の数値を計測し、追肥の要否を判断できるような試みを行ったという。

タマネギの腐敗も減少

AIの導入による成果では、野菜の品質管理がしやすくなったことがある。カット野菜の鮮度を保証する期間が従来の5日から1・2倍の6日に延びたといい、それによる販路拡大も期待できるようになった。また、タマネギの場合はAIで乾燥処理の最適化を図ることで、腐敗率も低減できたという。収量増加も期待できる結果だ。

サンライズファーム西条の担当者は「会社としてはできるだけ土日の出勤は少なくしたい」といい、労働環境の改善も課題。これについては、環境センサーや画像センサーのモニタリングによって、休日に種苗施設の現場に足を運んで見回りする回数を減らすことができたと強調していた。

国がスマート農業に力を入れているのは、農業の将来への危機感がある。

スマート農業の技術実証についてのシンポジウムの様子=5月13日、愛媛県西条市
スマート農業の技術実証についてのシンポジウムの様子=5月13日、愛媛県西条市

シンポジウムでは、農水省大臣官房政策課技術政策室の助川洋平課長補佐が基調講演。主な仕事が農業の「基幹的農業従事者」について、平成27年に176万人だったのが令和2年に136万人にまで減少し、高齢者(65歳以上)の占める割合は平成27年の64・9%が令和2年に69・8%と増加したとして、確実に高齢化が進んでいることを指摘。「農業の担い手不足が深刻」と述べた。その上で、これまでの農業の現場は人の手に頼る作業がほとんどで、熟練者でなければできない作業も多かったとし、省力化と人手確保、負担軽減が重要な課題と報告した。

こうした課題への取り組みがスマート農業で、助川補佐によると、国の計画では現在、技術実証の段階で「先端技術を実際に生産現場に導入し経営改善を図っている」といい、令和3年度から輸出重点品目の生産拡大、現場で得られたデータなどのシェアリングを進めていくとした。

課題は費用対効果