ビブリオエッセー

自分と向き合い変わること 「アーモンド」ソン・ウォンピョン著 矢島暁子訳(祥伝社)

扁桃体は人間の感情に関わる脳の器官でそのかたちが「アーモンド」に似ている。主人公のソン・ユンジェはこのアーモンドが小さいため喜びも悲しみも、愛も恐怖も感じられない「失感情症」の高校生だ。

幼少期に目の前で祖母が殺され、母が瀕死の重傷をおう事件があったがいつも通りの無表情だった。ユンジェを「世界で一番かわいい怪物」と呼んで愛した祖母はもういない。感情の訓練を毎日繰り返してくれた母は病室で眠り続けている。父もいない。そんなユンジェが自分とは対照的に感情の起伏が激しく粗暴な同級生ゴニと出会い、物語は大きく動き出す。

友人から、あのBTSのメンバーも推薦している話題の小説だと聞いて読んでみた。読後は私も自分の性格と向き合うべきだと感じた。自分の厄介な気性と長年つきあってきた私だが、いまだにつかみきれずにいるのだ。

感情の抑えがきかず、怒っていても嬉しくてもぽろぽろと涙が流れてしまう。映画でも本でも周囲がちょっと引いてしまうほど涙を流す。よくいえば「他人の気持ちに寄り添ういい子」なのかもしれないが本人はそんなに心地よくはない。負の方向にあふれ出た感情のほとばしりは時に自分も周りも傷つけてしまう。

そう、私の性格はゴニのようだ。両親を知らずに育った少年は非行を繰り返し、みんなに避けられていた。しかしゴニは感情が豊かだ。ユンジェを試そうと蝶を解体して見せた後、涙を流しながら戻らぬ命の名残を片付けた。自分を変えたかった二人。終盤には涙があふれた。

私も自分が変わることができるまで長い時間がかかるだろう。それでもきっと変われると信じている。夢と葛藤を抱える私と同じ高校生に、国を超えて共感した。

神戸市東灘区 加藤岬 17

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