主張

大規模接種 自衛隊に続く体制整備を

新型コロナウイルスとの戦いに勝つための切り札が、広範囲なワクチン接種である。

首都圏4都県と関西3府県の高齢者を対象に、自衛隊が東京と大阪で運営する、新型コロナワクチンの大規模接種センターの予約受け付けが17日、始まった。

当初の予約は東京23区と大阪市の住民に限定し、順次その範囲を広げる。実際の接種は予約時期に応じて24日から始まり、1回目の接種の際に2回目の日時が指定される。

大阪では17日、受け付けの開始から約25分間で準備していた約2万5千件分が全て埋まった。

防衛省の大規模接種対策本部長を務める中山泰秀副大臣は「ワクチンは十分な量を確保している。慌てず落ち着いて予約をしてほしい」と呼びかけている。一日でも早い接種を望む気持ちは分かるが、ワクチンは必ず打てる。冷静に対応したい。

大規模接種において、国民の命を守ることを使命とする自衛隊の組織力、機動力に対する期待は大きい。ただ自衛隊には本来任務があり、いつまでも頼り切るわけにはいかない。ワクチン接種の主体は自治体である。

政府は7月末の高齢者接種完了を目標に掲げるが、自衛隊の奮闘だけでは達成できない。各自治体は自衛隊の接種センターをモデルケースとして会場の設置・運営に生かしてほしい。打ち手の確保に向けて歯科医師、研修医、離職看護師らを活用する方策は、政府が主導すべきだ。

大規模接種センターと自治体の予約システムは接続されていないため、二重予約ができてしまう懸念がある。当初計画されたマイナンバー利用などの把握システムが間に合わなかったためだが、今は一人でも多くの人に接種を完了させることが大事だ。二重予約がワクチンの廃棄につながる事態を最も恐れなくてはならない。

キャンセルが出た際のワクチンをわずかでも無駄にしないよう、センターも自治体も運用に工夫が求められる。その際は必ずしも公平性にしばられる必要はない。有効活用を最優先してほしい。

今回の接種に間に合わないとしても、将来の同様の危機に備え、国と自治体がワクチンの接種状況などを一元的に把握できるシステムの構築が喫緊の課題であることに変わりはない。

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