令和元年7月の参院選広島選挙区をめぐる買収事件で公選法違反の罪に問われた元法相で前衆院議員、河井克行被告(58)の公判が18日、東京地裁(高橋康明裁判長)で開かれ、弁護側の最終弁論が行われた。買収罪の成立自体は争わないとした上で、現金を受け取った地元議員ら100人全員が今も刑事処分を受けていないことを挙げ「差別的な訴追で、公訴権の濫用(らんよう)だ」と主張。「裏取引で検察官の意図に沿うよう(議員らの)供述を誘導した」などと訴え、執行猶予付き判決を求め、結審した。判決は6月18日。
弁護側は、検察側が論告で「前代未聞の大規模買収事件」と表現したことに対し、現金供与の主な目的は党勢拡大や克行被告の政治基盤の確立で、妻の元参院議員、案里氏(47)の当選は付随的な目的にすぎず「具体的な票読みを行って票を買う典型的な買収事件とは大きく異なる」と反論。「買収による選挙結果への影響は認められない」と強調した。
また、初公判で全面否認していた克行被告が、公判途中で大半の犯行を認めたことについても「(検察側の)政治活動の実情を無視した皮相的な見方や一方的な評価に基づく捜査など、すべてを受け入れることが納得できない相応の事情があった」として、検察への批判を繰り返した。
この日は、克行被告の最終意見陳述も行われた。有権者や支援者への謝罪を口にし「一日も早く地元に帰り、おわび行脚をさせていただきたい。石つぶてを投げていただくため、十字架を背負って広島の地を歩く覚悟だ」と、声を震わせた一方、参院選前に自民党本部から陣営に提供された1億5000万円については「買収には1円も使わなかった」と、改めて強調した。
検察側は、論告で懲役4年、追徴金150万円を求刑している。