勇者の物語

発覚したウソ裏で何が 小津社長「今は言えん」 虎番疾風録番外編227

交換トレード成立を発表する長谷川実雄・巨人球団代表(右)と小津正次郎・阪神球団社長
交換トレード成立を発表する長谷川実雄・巨人球団代表(右)と小津正次郎・阪神球団社長

■勇者の物語(226)

昭和54年1月31日午後11時30分、小林繁が阪神へのトレードを了承。日付が変わった2月1日午前0時18分、読売本社の会議室で長谷川代表、小津社長同席でトレードが発表された。江川の身代わりとなった小林は時折、笑みも浮かべてこう語った。

「阪神にお世話になることになりました。ボクは野球が好きです。これからもずっとやっていきたい。いやいや行くのではなく、阪神のために精いっぱいやりたい。みなさんにお願いします。ボクは割り切って行くのです」

小林が〝悲劇のヒーロー〟になった瞬間だった。

「江川騒動」もついに決着―と思われた。ところがその日に〝事件〟が起こった。金子コミッショナーと鈴木セ会長が「2人が責任を取る」といった小津発言に猛反発したのである。

まずは南荻窪の自宅前で金子コミッショナーが憤慨した。

「トレードといっても私は期限をきったわけじゃない。あれじゃぁ、裏工作があった―と勘繰られてもしかたがない。ちゃんと江川を阪神に入団させてからトレードをやって欲しかった」

そして連盟事務所では鈴木会長が怒りを爆発させた。

「小津社長はオレとコミッショナーに責任を取ってもらう―と言っているが、冗談じゃない。オレは『責任を取る』なんてひと言もいっちゃぁいねぇ」

話しているうちに怒りが増してきたのだろう。べらんめぇ調になっていった。

「一番いい商売をしたのは阪神じゃねぇか。ただで15勝のピッチャーが取れたんだから。いくら労務担当重役といっても、組合をだますのとはわけが違うんだ。自分では筋論とか協約厳守といっときながら、やることはこうだからね」

世間の批判や責任は、私とコミッショナーが取る―と言った鈴木発言はみんなウソ。小津社長の捏造(ねつぞう)―というより、こんなに簡単にばれるウソをつき、金子、鈴木両氏を怒らせてまでなぜ、小津社長は巨人とのトレードを強行したのか。それが分からなかった。

裏で何かがあったはず…。担当記者たちも小津社長を追及した。だが、答えは「今は言えん」の一点張り。

(敬称略)

■勇者の物語(228)

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